ナグモ産業(南雲誠社長)は1981年の設立で、当初は航空貨物を主に運んでいた。設立5年後の1986年にユニック車を導入し、精密機器輸送の分野に参入している。
その当時については、創業者の前社長(南雲勝利現会長)から「精密機器をやる仲間(地元の同業者)がいなかったのでユニック車を導入したと聞いている」(南雲社長)という。そのころは他社がやっていなかったので付加価値が高かったようだ。一方、その背景には航空貨物の取引先の事情が変わり、同社に出される仕事の量が減少してきた、という事情もあったようだ。必然的に「自分で取引先を開拓」(同)せざるを得なかったのである。
ナグモ産業の現在の業務内容は、本社管轄の精密機器の輸送、搬入・据付けが売上の約3分の1である。それに対して売上的に1番多いのは成田営業所(成田市)で扱っている航空貨物で、また同営業所では衣料品のルート配送も行っている。
同社には成田営業所とは別に成田航空事務所もあり、事務所では配車管理や通関手続きのサポート業務などを行っている。それに対して成田営業所は、車両やドライバーの基地として業務を遂行している。ナグモ産業には、その他にも京葉物流センター(船橋市)があり、精密機器の部品や一般貨物を取り扱っている。
従業員は34人で、保有車両は27台。取得している認定、認証関係は、ISO9001認証(2003年)、安全性優良事業所認定(2005年)、グリーン経営認証(2007年)を取得している。ISOを取得する以前からサービス品質には自信があったが、「前社長には私がISO管理者として学べるように教育投資の意味もあったようだ」(南雲社長)という。
業務面をみると、航空貨物は成田に輸入された貨物を全国に運ぶ。そのうち関東近県への荷物は自車両で運び、それ以外の地域への輸送は協力会社に委託している。衣料品のルート配送は、衣料品を取扱っている荷主の物流センターから、デパート内のインショップなどに商品を配送する。
衣料品のルート配送は仕事を始めてから約3年と比較的新しい。これは、航空貨物の仕事は全国なので、ドライバーの時間管理が重要になってくる。そこで自車両での配送は関東圏内にしているが、成田営業所としては航空貨物以外の仕事もしなければならないという考えから新規開拓したもの。だが、今後の見通しとしては現状を維持しながら状況を見守りたい、としている。というのは衣料品の取引先の物流センターが荷主の自社センターから外部事業者への委託に変わる可能性があるからだ。それに伴ってルート配送も変わることが予想される。そうなった場合のメリット、デメリットなどを見極めたいという考えだ。
一方、精密機器の輸送、搬入・据付けは同じ運送事業といっても少し特殊な分野になる。納品先での搬入や据付けの作業には独自のノウハウが必要になるからだ。そのため通常は2人での乗務である。搬入・据付け作業で一人前になるまでには5年ぐらいかかるという。そこで2マン乗務では、責任者と補助者という組み合わせになる。トラックの運転はともかく、作業を含む責任者に育てるまでには教育投資がかかることになる。
一方、2マン乗務には労働時間短縮というメリットがある。精密機器輸送では地元から全国に輸送する。また、遠方の出荷場所まで引き取りに行き、そこから積込んで各地に輸送するようなこともある。その点、2マン乗務なら労働時間を短縮できるからである。
ナグモ産業では、この精密機器のノウハウを生かして半導体主体からネットワーク関連、印刷機器、医療機器などの精密機器輸送に取り扱いの幅を拡大する方向で取り組んでいる。