雄山陸運(山村仁社長)の設立は1964年なので50年以上の社歴をもつ。創業者は東京・大田区で陸送から始めたが、メインの取引先である特装車などのメーカーの工場移転とともに海老名市に営業所と倉庫を新設し、部品輸送なども始めた。そのような経緯から以前はメインの荷主への売上依存が70%を占めていたが、新規荷主を開拓して相対的に依存度を下げようと取り組んできた。その結果、メイン荷主の売上が50%になった時にリーマンショックに遭遇し、他業種の荷主開拓が奏功して自動車関係の落ち込みの影響を少なく抑えることができたという。
現在では創業時からのメインの荷主の売上が30%、その他を含めた自動車関係全体でも40%の割合になっている。売上構成は飲料関係が20%、郵便物の拠点間輸送が25%、食品が10%、その他は地元の機械メーカーの完成品や部材などとなっている。
同社の保有車両数は51台で、従業員数は47人、そのうちドライバーは42人である。関連会社としては、本社ビルや駐車場の管理と事務受託をしている雄山商会、こん包などの作業を行うオヤマパック、キャラクターケーキの製造とネット販売などをしているオヤマダイニングがある。運送事業者が関連会社でケーキの製造・販売をしているケースは他にもあるが、同社では昨年秋から始めたばかりだ。4年ほど前から喫茶店を開いていたが、今度は製造に入ったのだという。
輸送品目のうち飲料関係では、「リーマンショックの2年ぐらい前から取引を始めた」(髙田佳昭新規開発部課長)という。その時点で「郵便も少しやっていた」(同)。このようなことがリーマンショックの影響を少なくしたのである。また、リーマンショックは新規開拓をより推進する契機にもなったようだ。同社の取り扱っている食品類では、JA関係などの米穀類の輸送が多い。
雄山陸運では特注車両を保有して、他社との差別化を図る営業に力を入れている。特殊車両によってコストダウンを提案するというアプローチである。たとえば、4t車で最大9600mmのボディや、6500mmのアルミ製ウイングボディなどを、ボディーメーカーと共同開発した。このような車両で4t車の常識を超えた運搬を可能にし、大型トラックとの比較で大幅なコストダウンを提案できる。その他にもアルミ型材の使用によって車体の軽量化を図り、積載できるパレット枚数を多くでるようにしたり、特注車両の特徴を生かしたコストダウン提案で営業展開をしている。
このような特注車両は、メインの取引先である特装車メーカーとの共同開発である。荷主にとっても新製品開発の「試作品」的なメリットがある。
雄山陸運では、当面は現状のような事業展開で規模の拡大を図る方針である。だが、「昨年から人の確保が難しくなってきた。それまでは時季によって波はあったが、年間を通せば採用に困ってはいなかった。しかし昨年からは厳しくなってきた」(髙田課長)という。そこで、「コスト・メリットなども考えて様ざまな募集の仕方をするようにした」(同)。
それと併せて雄山陸運では、働き方の多様化も進めている。今年から、週休3日を導入し、さらに週休4日の正社員の導入も視野に入れて取り組みを進めている。変形労働制を導入した就業規則の見直しなどを図り、また、業務災害補償制度の導入など、働き方改革を推進していく方針である。それにより兼業農家の人や介護の必要な家族のいる人などにも雇用の門戸を開き、さらに短時間労働を望む女性にも働きやすい会社を目指すという。