小出商事(小出篤史社長)の実質的な創業は2008年8月なので、ちょうど10年である。法人としての設立は1985年までさかのぼるが、小出社長が2008年に会社を買収して現在の小出商事として再スタートした。小出社長は17年前の25歳の時に運送業界で仕事を始めたが、その後、自分で会社を設立するかどうか、という時に「既存の運送会社を買収することにした」(小出社長)という。
現在の社員数は、役員を含めて26人で、そのうちの22人がドライバーである。保有車両はトレーラヘッド22台(さらに11月に1台増車する)、トレーラシャーシ38台、大型車2台(ダンプと平ボディ)である。
業務の内容は、70%が鉄や非鉄金属のスクラップ輸送、30%が海上コンテナ輸送である。このうち自車両はほとんどがスクラップ輸送となっている。海コン輸送をしている自車両はヘッドが1台だけで、常用の傭車6台で海コン輸送をしている。
スクラップ輸送が多いのは、「スタートがスクラップ輸送だったから」(小出社長)である。そのような経緯から自車両はスクラップ輸送で、海コン輸送は傭車が主体にしている。
このように小出商事のメインは金属スクラップの輸送で、鉄くずや非鉄金属くずなどである。普通の産業廃棄物の引き取りなどはごく僅かしかやっていないという。
鉄くずの取引先はスクラップ問屋や商社、電炉メーカーで、非鉄金属くずは専門商社が多い。これらの取引先は80社ほどある。オーダーは取引先から前々日や前日に入る。スクラップの引き取り先も、工場などを主に80社ぐらいあるという。トレーラで空のコンテナを積んでいき、そのコンテナにスクラップを積込んでもらう。そして「回収したスクラップは、問屋に納めたり、港に運んでそのまま輸出されたり、あるいは電炉メーカーの工場に運んでいる」(小出社長)。スクラップは建設現場などからも排出されるが、建設現場からの回収は「積込み作業が粗いので車両などが傷みやすいからやらない」(同)という。
一方、海コン輸送は自社のヘッド1台を除いて傭車で輸送している。港からの輸入コンテナ輸送だけでなく、輸出コンテナの引き取りもある。海コンの場合には事前に予定が入っているので配車は楽だが、遠方では福島県や静岡県(浜松市)、長野県などへの輸送もある。そのため労働時間は36協定の枠いっぱい、といった現実もあるようだ。
このように小出商事の仕事は、けん引免許が必要だが、基本的に「同業者からのドライバーは採らない」(小出社長)という。「普通免許しか持っていなくても大型とけん引を同時に取らせ、トレーラにすぐ乗務させた方が教育的にも良いし、一から育てた方が離職率も低い」(同)からのようだ。
同社がこだわるのは車両である。「車好きが集まってくるので架装には金をかけ、普通より200万円ほど高い」(小出社長)。その方が逆にメリットがあるというのだ。「5年スパンで考えた時に200万円を募集費なども含めた宣伝費と考えると安くつく」(同)という考え方である。それに「スクラップの車両はきれいに架装してある方が引き取り先のお客も丁寧に積込んでくれるので車が傷まない」(同)のだという。
小出商事が次に考えているのは、「運送事業で金融機関などの信用を築いたら、倉庫業をやりたい」(小出社長)。輸入コンテナのデバニングや通関もやるようにする。冷凍はやらないが冷蔵商品までは1次預かりまでしたいと考えている。だが、自車両でやるのはトレーラ単位の荷物で、自社ドライバーは30人まででサービスレベルを上げたい、という。