再配達削減へ多様化する宅配ボックス


昨年は宅配便をはじめとしてドライバー不足や長時間労働への関心が高まった年だった。 とくに宅配便の再配達問題に対しては多くの人が前向きに考えるようになってきた。

内閣府は昨年12月に「再配達問題に関する世論調査」の集計結果を公表した。同調査によると、宅配便の約2割が再配達になっていることについて「問題だと思う」という回答が73.3%だった。男女で大差がなかった。年齢層別では30~39歳、18~29歳で「問題だと思う」人の割合が高い。ただし、高齢になるほど再配達の割合が低いため、高齢者では問題意識が低いという事情があると思われる。

宅配ロッカーの利用意向では、「利用したい」が42.9%で、「利用したいと思わない」が50.9%だった。「利用したい」という回答を年齢層別でみると若い年齢層に宅配ロッカーを利用しても良いという割合が多い。

再配達を減らすための効果的取り組みについてでは(複数回答)、コンビニなどでの受け取り(46.8%)、自宅用の宅配ボックスの設置促進(42.4%)、再配達の有料化(27.0%)、WEBやアプリなどで受取場所などの変更手続き簡素化(23.0%)、鉄道駅など公共スペースへの宅配ロッカー設置の促進(19.1%)、職場などでの受取促進(18.6%)などとなっている。

一方、再配達に関する社会的関心の高まりを背景に宅配ボックスも注目商品として多様化してきた。そのいくつかをタイプ分けして、それぞれの特徴を見よう。

  • 個人宅:固定式宅配ボックス=各戸で設置するので購入、設置費用がかかる。だが、毎日コンスタントに宅配便の荷物を受け取るという一般家庭は少ないので稼働率が低い。

  • 個人宅:簡易式宅配ボックス=費用対効果という点から、最近は個人宅用の簡易式宅配ボックスも販売されている。簡易式宅配ボックスは折り畳み式で宅配便が届けられる予定日だけ玄関先などに出しておく。盗難防止用にドアノブなどと結べるヒモがついていて、宅配便のドライバーが荷物を入れて、半がけにしてあった南京錠を施錠する。廉価なのは経済的メリットだが、ヒモを切ってボックスごと盗まれるというリスクもある。

  • 共同式宅配ボックス:集合住宅型=マンションなどに設置する宅配ボックスで、個人宅の固定式宅配ボックスと比べれば費用対効果が良い。だが、回転率と宅配ボックス数いう問題点もある。受取人が長時間取り出さなければ回転率が低くなる。すると宅配ボックスが全部塞がって後から届いた荷物は預けることができなくなる。

  • 共同式宅配ボックス:公共施設型=公共施設型としたが民間の施設でも構わない。駐輪場や鉄道駅、コンビニ施設内などに設置する宅配ボックスである。設置場所のスペース提供者には、「ついで需要」などの相乗効果も期待できる。通勤者などの往来がある最適な立地条件ならサイドビジネスも可能性だ。たとえば、荷物を預ける宅配便会社は100円を入れて使用する。100円での預かり時間を決め、時間をオーバーしてから荷物を出す場合には、荷物の受取人が追加料金を入れないと解錠できなくする、といったシステムなどだ。

  • 移動式宅配ボックス=移動宅配ボックスはヤマト運輸が実証実験を行っている「ロボネコ・ヤマト」を念頭においたもの。自動(無人)宅配ではなく、「宅配ボックスがやって来る」ととらえれば面白い。受取人からすると時間的拘束が極端に短縮できる(指定場所に到着の3分前に連絡)。宅配便会社からすると、自動運転を前提にして深夜22時から翌日の早朝5時までの受取を希望する利用者が多い地域などならメリットがあるだろう。

  • 住宅自体が宅配ボックス=これはアマゾンの「アマゾン・キー」を念頭に置いたもの。希望する人には電子キーで解錠して無人の住宅に配達員が入って荷物を届ける。配達員の行動は監視カメラでリアルでも録画でも確認できる。「キー」という側面からでなく、家それ自体を宅配ボックスにしてしまうという、究極の宅配ボックスととらえる方が面白い。日本での普及は、プライム・ナウの会員の一部などでは可能だろうが、大方の日本人はセキュリティーよりメンタリティーとしてなかなか受け入れないのではないだろうか。

いずれにしても、これからはラスト・ワン・マイルが多種多様になってくる。