人件費高騰と労働力確保および定着の重要性


どこに行ってもドライバー不足の話題は尽きない。ドライバーだけでなく、作業のアルバイトの確保も難しくなっている。

昨年の年末もそうだが、荷動きが活発になる3月の年度末にかけては、引越の繁忙期とも重なるので、アルバイトの時給単価が上昇してくるだろうと思われる。いずれにしても正規雇用、非正規雇用に関わらず人件費の高騰は避けられない。

非正規雇用労働者の賃金は繁閑のサイクルによって多少の違いが出てくる。だが、正規雇用労働者の賃金は上昇し続ける。雇用の確保には賃金の引き上げが不可欠になっているからだ。

都内のある中小事業者では、1人採用して定着させるのに募集費が100万円ぐらいかかっているという。そのため現在、ドライバーの10%以上が派遣ドライバーで、派遣会社への支払いは1時間2000円強となっている。ただし、派遣会社との契約では派遣開始から半年後には同社に準社員として転籍させることを条件にしている。

一般募集とのトータルでのコスト比較と、半年間は試用期間のようなもので、向き不向きを判断できるというメリットから、最初は派遣を入口にしているようだ。しかし、それでも派遣から準社員になる率が低いという。準社員になると時給が1000円なので収入が減るからである。そこで同社では昨年10月から100円上げて準社員の時給を1100円にした。また、今年4月からはさらに100円上げて時給1200円にする予定だ。そのようにしないと、派遣ドライバーから転籍して準社員ドライバーにならないのだという。

昨年暮れに会った北関東のある中小事業者から、4月からのベースアップについてどのくらい賃上げするかを検討中との話があった。人件費増加の上限については、利益がゼロになっても良いという選択肢もあり得るということだった。赤字にならないギリギリのところまで人件費を増やそうというのである。

これは、いわば先行投資だ。ともかく労働条件の改善を先行して進め、その後で経営改善のための運賃交渉などをするという考え方である。追い詰められれば荷主との交渉でも本気度が違ってくる。それは相手にも必ず伝わるはず、という経営者の覚悟が感じられた。

このようにドライバーの賃金が上昇する中で、軽トラックの自営業者の単価も上がってきているようだ。中には1日チャーターで3万円の相場もあるという。軽トラの自営業者なら外注費で処理できるし、それに労働時間などの問題も直接の関わりはなくなる。そのためネット通販の宅配貨物の増加もあって軽トラ自営業者のチャーター運賃も上昇している。

だが良く考えてみると、ドライバーをはじめ従業員が辞めないような会社になれば、募集費用などはかからない。もちろん、仕事が増えて増車する場合には新規採用の募集が必要になるが、従業員が辞めないような会社なら応募者も来ることになる。ドライバー同士では他社の労働条件なども情報交換しているからだ。

もちろん賃金を上げる努力は必要だが、社員満足度さらに社員幸福度の向上を追求して定着率を高めようとする企業が増えてきつつある。