東京商工リサーチによると、2016年に休廃業・解散した企業数は2万9583件で前年比8.20%増となった。これは調査を開始した2000年以降で過去最多である。
一方、2016年の企業倒産は8446件で前年比4.15%の減となり、26年ぶりに8500件を下回った。だが、倒産が沈静化する中で、倒産の約3.5倍の企業が休廃業や解散に追い込まれている。また、2016年の休廃業・解散と倒産企業を合計すると3万8029件となり、年間で4万社近い企業が市場から撤退していることになる。
休廃業・解散企業を産業別にみると、最多は飲食業や宿泊業、非営利的団体などを含むサービス業他の7949件で、26.9%と4分の1強を占めている。次いで建設業の7527件(構成比25.4%)、小売業の4196件(同14.2%)、製造業の3017件(同10.2%)と続く。サービス業他と建設業で5割以上を占めている。
それに対して運輸業は2015年が471件(前年比-1.7%)、2016年466件(前年比-1.1%)と休廃業・解散の件数が減少している。
また、休廃業・解散企業の代表者の年代別構成では60代が34.7%と最も多く、次に70代の33.7%、80代以上の14.0%と続く。60代以上で82.4%を占めていることになる。なお、60代以上の82.4%、80代以上の14.0%という構成比は、いずれも2000年以降で最高となっている。
ここからも休廃業・解散の大きな要因の一つが、高齢化と後継者不足であることが分かる。つまり高齢化と事業継承問題などから、経営者が休廃業・解散を判断して件数を押し上げていることになる。
だが、今後は政策誘導的に休廃業・解散が増加する可能性がある。事業の将来に展望が描けない企業に、人材や資産を縛り続けることは経済にとって好ましくないという認識から、金融機関が経営者の経営手腕や市場の将来性、業績など「事業性評価」を進めるからだ。近年の金融支援策に甘んじて抜本的再生を先送りしてきた企業を、市場から退出させるような方向を強めてくることが予想される。
以上は、東京商工リサーチのデータや分析の要約だが、運輸業の休廃業・解散件数が他産業と比較して少ないように思われるかもしれない。 周知のように、全国各地に「会社の面倒を見てほしい」といった要請を受けたという事業者が少なからずいる。経営内容が悪化して支援を求めるケースもあるが、必ずしも経営が行き詰まった事業者とは限らない。経営者の高齢化と後継者問題が背景にある。もちろん、事業の将来性ということもある。
一方、「面倒を見る」側の事業者は、ドライバー不足や傭車確保難などから、ドライバーとトラックを確実に確保するために買収して子会社化したり、企業名や代表者はそのままで実質的に子会社化をしたりしている。このようにしてトラック運送業界では緩やかなグループ化が進行しつつある。
子会社化(完全なあるいは実質的な)される事業者は、休廃業・解散としてはカウントされないが、実質的には休廃業・解散と同様である。運輸業の休廃業・解散が他業種より少ない理由はこの辺にあるものと思われる。