財務省では今秋から輸出入の手続きをする通関士の在宅勤務を認める方向にある、という。もちろん無条件で認めるわけではない。通関士は、現在は税関の許可を得た営業所で働く必要があるが、情報管理など一定の要件を満たせば職場以外の場所で仕事をすることを認める、というもの。
輸出入申請は年ねん増加しており、通関士の需要も高まってくる。しかし、地域によっては通関士の確保に苦労しているケースもあるようだ。その理由の1つに勤務形態がある。通関士の資格を取得していても、家庭の事情などで通勤が難しい人もいるからだ。
だが、在宅勤務が可能になれば、勤務形態に制約のある有資格者でも働きやすくなる。このようなことから、財務省では情報管理や労働時間管理などの、在宅勤務に必要な要件の指針を4月にも示す予定という。
周知のように現在、働き方改革などが検討されている。少子高齢化社会の到来と人口減少が進むなかでは、女性や高齢者の労働力化が必要だ。それには働き方を見直して、柔軟性のある働き方を考えていかなければならない。とくに日本では、今後は人口が減少していく。労働力人口の減少が進むなかでは、多様な働き方によって労働戦力を増やし、生産性の向上を図らなければならない。
このようななかで通関士においては在宅勤務の可能性が開けてきたが、では、トラック運送業界における在宅勤務の可能性はどうか。トラック運送業界における在宅勤務の可能性についても、真剣に考えることが必要な段階にきているのではないだろうか。
無人運転は別としても、労働集約型産業のトラック運送業界においては、在宅勤務が可能な職種は限られてくる。在宅勤務の可能性があるのは、おそらく配車担当者や運行管理者などではないだろうか。現在の段階では条件つきながらIT点呼が認められている。つまりIT機器を使って、直接対面でなくとも点呼などが行われているわけだ。IT点呼に必要な機器がどこにあっても同じことだ。そのように考えると、情報環境や安全管理条件などが整えば配車担当者や運行管理者の在宅勤務もけして不可能ではないだろう。
経済産業省では製造基盤技術実態等調査事業の一環として、「自動車車両情報の利活用に関する調査研究委員会(テレマティクス)」が2016年度の報告書を作成した。このテレマティクス研究会は、トラックに搭載している各種のIT端末機器の機能を有効に活用することで、トラックの稼働効率を上げ、ひいては生産性の向上を図ろうというのが目的だ。2016年度は、実際にIT車載端末を有効に使って経営効率の向上などを実現しているトラック運送事業者の事例を、ヒアリング調査をベースにして報告書にまとめている。
同報告書では、車両の稼働効率の向上などを直接的なテーマに取り組んでいるが、その延長線上に配車担当者や運行管理者の在宅勤務の可能性などを視野に入れることもできるのではないだろうか。
いずれにしても既成概念にとらわれることなく、全く新しい観点から物事を発想していくことが必要だ。トラック運送業界においては長時間労働の改善が大きな課題だが、併せて多様な勤務形態なども考えていく必要がある。トラック運送業界における働き方改革だ。
そのようななかで、トラック運送の現場にも在宅勤務が可能な業務がないか、といったことを考えるのも楽しい。IT点呼が可能なのだから、情報環境や安全管理条件が整えば、配車業務や運行管理などは在宅勤務も可能なような気がする。