前回に書いた事業者の経営委員会は、オーナー会長、社長、全取締役の他、社外からは顧問弁護士と長期契約しているコンサルタント、取引先の元支店長、金融機関から1人、それに私の5人が加わって構成した。
ところが、この経営委員会でも、結局、オーナー会長に対しても異論を唱えるのは自分1人だけであった。
コンサルタントなどは、自分を必要とするような事業などを始めさせようとする発言に終始していた。それもオーナー会長に向かって発言しているのであって、社長の存在は軽視、他の役員や経営委員は眼中にない、といったような話し方である。財布を握っている人だけが対象で、他は無に等しい存在なのである。
もっとも、筆者は煩わし存在として多少は眼中にあったようだ。何かにつけて対抗意識をむき出しにした発言をしていた。
このようにして何度か定期的な経営委員会に出席しているうちに、顧問弁護士とコンサルタントには、毎月、定期的にかなりの金額を支払っているな、といったこともそれなりに感じるようになってきた。この2人は、オーナー会長のお気に入りなのだな、ということにも気付いたのである。
同時に、社長がなぜ筆者を経営委員会のメンバーに加えたかったのかも理解できた。オーナー経営者にたいして、是は是、非は非と言うことができるメンバーが加わっていないと、お気に入りの2人の思うつぼになってしまい、ムダな経費が増加することになる。しかし、収支に対しては社長が責任を負わなければならない。
そこで、社長が言いづらい否定的意見を、当方が言ってくれるだろうと期待したのではないかと推測した。だが、別に社長の意向を代弁をするつもりは全くない。自分で思った通りの意見を言うまでのことである。
そこで、利益を増やすのは簡単ですよ、目の前にいる弁護士やコンサルタントの2人へのムダな支払いをなくすだけで、年間で4ケタ台の純利益が出せますよと言いたかったのだが、さすがにそこまでは言わなかった。
つまり、人にしろ物にしろ、経営者には真贋を見極める力が必要だ。そしてかりに本物の人物と判断した人の見解であっても、あくまで参考意見の一つとして位置づけ、その意見も参考にしながら最後は自分で物事を判断しなくてはならない。経営トップは孤独な考える人であり、自分の責任において判断することが必要なのである。
ともかく、経営者は耳に痛いことも率直に言ってくれる人を信頼した方が良い。金を払ったら耳触りの良いことだけを言うようになる人には金を払うな。そして、最後に判断するのは自分自身である。