経営環境が年ねん厳しくなってきている。経済のグローバル化で大手企業は以前から国際競争のただ中にある。中堅企業も国内市場が縮小することが明らかであり、成長するには海外市場に進出しなければならない。
基本的には国内だけで事業を展開している中小企業も、国内市場が縮小することを前提にした今後の経営戦略をもたなければジリ貧は免れず、いずれは淘汰されてしまうかも知れない。それに国内だけで事業を展開している中小企業といえども、現実には取引先の大手・中堅企業を介して、すでに何らかの形で国際市場に組み込まれてしまっていることを認識すべきだ。
このように国内市場の縮小と経済活動のグローバル化の中で企業が生き残るために、経営者には何が必要か。もちろん、経営者にとって必要なことはたくさんあるが、ここでは「運営」から「経営」へ、という切り口からみることにしよう。
ある中堅企業の経営者が次のようなことを語っていた。「これからの企業経営は、運営ではなく経営が必要になってくる。今までは経営者が会社を運営しているだけでも何とかなってきた。しかし、これからは経営をしなければ生き残れない時代になる」。
この経営者が筆者にこのように語ったのは、今から四半世紀も前、バブルが崩壊した直後のことであった。
経済が成長している時代は、特定の取引先などとの取引関係が安定していれば、会社を運営しているだけでも良かった。取引先が優良企業であれば、会社を運営しているだけでも売り上げを伸ばし、利益を出すことができた。つまり、経営者も毎日がルーティンワークで良かったというのである。
しかし、経済成長が停滞するとそうはいかない。本当の意味での経営が必要になってくる。経営者が経営をできないと、企業は衰退し最悪の場合には撤退を余儀なくされてしまう。そのような時代になってくる、という認識をこの経営者は四半世紀近くも前にもっていたことになる。 バブル崩壊後の日本経済は「失われた10年(20年)」などといわれている。1990年代の後半から2000年代初めにかけて、多くの企業がリストラクチャリングに取り組んだ。その結果として「戦後最長の持続的景気拡大」になったが、2007年夏のアメリカのサブプライムローンの破たんや、2008年秋のリーマンショックによって大きな景気後退を余儀なくされた。
さらに2011年3月の東日本大震災である。大震災後の企業ビヘイビアは、効率性の追求にリスクヘッジという新たな要素を付け加えることになるだろう。そして、経済のグローバル化と国内市場の縮小への対応という流れが加速する。
このような経緯を振り返りつつその言葉を思い出してみると、「運営」から「経営」へ、という表現は的を得ていたという実感が強まってくる。