荷主の物流共同化とトラック運送業界


昨年10月27日づけの朝日新聞(デジタル版)によると、飲料大手のコカ・コーラとキリンホールディングス(HD)が資本業務提携をする方針を固めたという(その時点ではまだ両社は正式発表していない)。同報道によると両グループが互いに数%の株を持ち合い、物流や原料調達で協力するという内容だ。両社が話し合いを進めていて、早ければ年内にも提携すると報じていた。している。業務面では共同で商品を運んだり、原料や容器などの調達面でもコスト削減を図るという。

また、その2日前の昨年10月25日、三井化学、出光興産が発表したところによると、千葉県の京葉地区に工場がある化学メーカーなど6社で小口製品の共同物流化を開始する。共同物流に参加するのは三井化学と出光興産の他、東レ、JSR、プライムポリマー、三井・デュポンポリケミカルの合わせて6社。

この物流共同化は、小口化学品の長距離輸送能力の安定的確保が主たる狙いだ。これまで小口化学品の長距離輸送は一般貨物と混載で複数の積み替え拠点を経由していた。物流共同化では、各社の工場から集荷し、配送拠点までの幹線輸送と、配送拠点から各納品先までの配送を集約化することで、専門的、効率的輸送を目指すとしている。同時に積載率向上によりCO2排出削減も推進する。

小口化学品共同物流化の幹事物流会社はサンネット物流(本社・千葉県市原市、本多昇社長)で、当初は東北エリアを対象に物流共同化を実施する。さらに今後は共同物流への参加企業を募りながら、他のエリアにも拡大していく計画だ。

幹事物流会社のサンネット物流は山九とトライネット・ロジスティクス(三井物産の100%子会社)が50%ずつ出資しており、合成樹脂や合成ゴムなどの貨物を主に取り扱っている。

物流の共同化では、食品大手メーカーの味の素、日清オイリオグループ、カゴメ、日清フーズ、ハウス食品グループ本社、ミツカンの6社による物流プラットホーム化構築への取り組みがよく知られている。通称F-LINE(Food Logistics Intelligent Network)で、これは幹線輸送の共同化(モーダルシフト推進、トラックの大型化など)、各地の拠点の相互有効活用、エリア配送(配送車両の小型化と車両回転率の向上など)といった総合的な共同化を目指すものだ。

F-LINEではすでに、関東・関西間における幹線輸送の再構築(2016年3月)、北海道エリアの共同配送(2016年4月)などを進めてきた。

さらに6社中の4社(味の素、カゴメ、日清フーズ、ハウス食品グループ本社)では、2017年3月に北海道エリア、2017年4月には九州エリアにおいて物流事業の合弁会社を発足する契約を昨年12月1日に締結した。

具体的には、今年3月に味の素物流の100%子会社である北海道エース物流の全株を4社で均等に保有して社名をF-LINEとする。そして今年4月には、やはり味の素物流の子会社である九州エース物流をF-LINEの100%子会社とし、社名を九州F-LINEに改称して2018年には九州エリアでの共同物流体制を構築するというものである。

さらに、これら食品メーカー4社では、2019年に物流子会社の統合も視野に入れているという。

このように大手メーカーなどは様ざまな業種で物流共同化を推進しつつある。この本当の狙いは何か。

トラック運送業界では、ドライバー不足への荷主の対応、といったとらえ方をしている関係者が多い。だが、荷主企業の真の目的は、国内市場縮小に対応するための物流システムの抜本的再構築である。結果としてドライバー不足への対応にもなっているに過ぎない。

このことをシッカリと認識しておかないと、荷主業界と市場ニーズの変化への対応を間違うことにもなりかねない。

ドライバー不足によって需給関係が変化し、運賃も上昇するといった淡い希望は捨てなければ、マーケットの変化についていけなくなってしまう。荷主企業も国内市場の縮小に対応しようとしているのだから、トラック運送事業者もそれに応じた企業戦略を考えなければならない。

国内での事業展開は市場縮小への対応が各企業に共通するキーワードである。