新型コロナウイルスの影響が各方面に出ている。3月11日~3月26日の間に断続的に全国の事業者に電話取材した。
今回の取材で困ったのは、取材を始めた当初の状況が短期間に大きく変化するようなケースがあったことだ。最初は「現在のところ大きな影響がない」といっていたのだが、その後、取引先が操業停止などを発表したことで状況が一変したような取材先もある。それだけ短期間に目まぐるしく状況が変化している。
今回の取材で見えてきた特徴をまとめてみると以下のようになる。
- 製造業で減産や操業停止をしている荷主では、最初は輸入部品の調達が滞るなどサプライチェーンを主要因にしていたが、現在では需要減退に対応する生産調整へと減産の理由が変化してきていること。
- 流通業では食品や飲料、酒類などの業務用が激減し、一般販売向けが増えている(業務用の減少をカバーできてはいない)。食品や日用品ではとりわけドラッグストアの販売が伸びている(化粧品や薬は減少しているが)。
- 一部商品ではまとめ買いなどにより物流のキャパシティを超える受発注が一時的にあった。
- 設備投資などの分野でも中長期の経営計画に狂いが生じ、工事の着工時期が延期されるような動きもみられる。
- 影響度の大きな貸切バスからトラックへのドライバーのシフトが進んでいる。
- 現在は影響が少ない事業者でも、今後どのようなるか先が見えないというのが共通した認識だった。
国際物流で真っ先に影響が出てきたのは海上コンテナなど輸出入の荷物である。中国からの海上コンテナを輸送している事業者は影響が大きい。傭車よりも自車両優先で運んでいるが、車両の回転数なども少なくなっている。国際航空貨物では、航空会社の減便によって一部の貨物では航路が変化したりしている。
自動車産業はすそ野が広く関連企業への影響が大きい。完成車や部品輸送への影響だけでなく、部品の原材料に使う樹脂などの輸送も減少している。さらに、構内の付帯作業部門でも内製化が進んでおり、その影響を受けている事業者もいる。鉄鋼などの素材型貨物も、設備投資計画の見直しなどで工事着工予定が保留になっているケースがみられた。一般の戸建て住宅などでもトイレやキッチンなどの水回り品が入ってこなくなっている。機械や家電その他の製造業も減産になっているので部品輸送の事業者には影響がでている。
農業ではごく一部だが北海道産品に風評被害がみられた。酪農では学校の休校などにより牛乳などで影響がある。水産物も飲食店向けの業務用が激減している。
食材や食品では業務用が激減し、一般販売ルートではレトルト食品や冷凍食品が増えている。とくにドラッグストアの伸びは大きい(分母が小さいが)。また、菓子類などでもお土産用は外需・内需とも減少し、包装用フィルムや包装材などにも影響が波及している。
印刷物もチラシやパンフレットの需要が減少し、印刷用インクなどにも影響している。ネット販売は伸びていると思われがちだが、商品によって差がある。春物アパレルや靴などは減少し、レトルト食品や冷凍食品のネット販売は伸びている。在宅率の向上と内食化により、プロパンガスの消費も伸びている。
運送事業者の人員確保などの面では、中国からの技能実習生が来日できないなどの影響も一部事業者にはある。また、各社とも従業員の新型コロナウイルスの感染予防には気をつかっているようだ。社内でも従業員同士の接触を極力避けるような工夫や、「3密」の典型ともいえる喫煙所対策、庫内作業員の多い職場では幾組かに分けて休憩時間を分離するなどである。
新型コロナウイルスの影響はドライバーの募集、応募にも変化をもたらしている。運輸業の中でも貸切バスへの影響が大きい。かなり深刻なダメージを受けている会社もあるようだ。そこでバスのドライバーからトラックドライバーに転職する動きが進んでいる。
バスのドライバーは大型2種免許を持っている。けん引免許まで取得している人は多くないが、大型車乗務なら即戦力になる。ただ、ずっと旅客だけをしてきたドライバーは荷役作業に慣れていない。そこで採用した事業者では、パレット積みなど荷役作業のない仕事に就けるようにしている。また、トレーラ輸送で荷役作業がない場合には、採用後にけん引免許を取得させるという事業者もいる。
このように、すでにバスのドライバーを採用したという事業者が増えつつある。また、これから積極的にバスのドライバー向けに募集するという事業者もいる。