働き方改革と生産性向上は表裏一体


最近は「働き方改革」という言葉を頻繁に耳にするようになった。

社内に働き方改革のプロジェクトをつくって取り組んでいる事業者もあれば、あるいはES(社員満足度)の向上を目指して、まずES調査から始めようとしている事業者もいる。アメリカなどではCHO(チーフ・ハピネス・オフィサー)がいる企業もあるという。CEO(最高経営責任者)やCOO(最高執行責任者)と同じように、定期的に社員の幸福度を調査し、社員の幸福度を追求していく責任者がCHOだ。

働き方を変えようという取り組み自体は良いことだ。長時間労働の結果として過労死などといった問題が生じるのは、普通に考えれば異常な事態なのである。何のために働くのかといえば、直接的には生活するためであり、もっと広い意味では人として生きるためである。本来、労働はそのための手段に過ぎない。

ところが働くこと自体を目的化したり、金が欲しかったら長時間働けば良いといった発想の人もいる。もちろん働かずに金を得ることが良いということではない。働くのは当然だが、働くことそのものがあたかも目的であるかのように誤解している人がいることも事実だ。これには長時間働かないと生活の糧が十分に得られない、といった現実もある。

このような異常が常態化してしまうと、それが当然であるかのような錯覚に陥ってしまう。働き方改革という政策を素直に受け止めれば、人間らしく正常な状態にしようということだ。必要なだけ働いて、日々の生活や人生を楽しむ。そのような社会が実現できれば一番良いことである。

そこで働き方改革とは何かという問題である。もちろん様ざまな面から捉えることが必要だろう。だが、働き方改革の柱になるのは、労働時間を短縮し、収入を増やすということに尽きる。時短と収入増が働き方改革の2本柱である。

ところがトラック運送業界の実態は、長時間労働で低賃金であり、時短と収入増を同時に実現するのはかなりハードルが高い。そのような現状からいかに働き方改革に取り組むかは大きな課題で、難しいことも事実だ。しかし、働き方改革に挑戦しないといけない。

現状のままでは労働時間短縮も難しい。また、かりに労働時間を短縮できたとしても、それに伴って賃金が下がってしまう。当面は賃金水準を維持しつつ労働時間短縮をいかに図るか、というのが現実的な段階である。そして、労働時間短縮も賃金アップも、それを可能にする原資が伴わないと画餅になってしまう。

そこで原資をどのようにして得るかという問題である。それには生産性を向上するしかない。

業界ではこの間、原価計算に力を入れて取り組んできた。だが、かりに何円何銭という単位まで正確に原価が計算できても、それで課題が解決するわけではない。原価計算はあくまで出発点に過ぎない。肝心なのは原価を超える収入をどのようにして得るかである。

つまり働き方改革と生産性向上は表裏の関係である。この両方を同時に進めるしか企業の将来はない。