標準貨物自動車運送約款改正に伴う新たな原価計算考


改正「標準貨物自動車運送約款」が11月4日から施行される。トラック運送事業における適正運賃・料金の収受を推進するために、標準貨物自動車運送約款を改正したもの。

国交省では、運賃が運送の対価であることを明確化するために、通達によって運賃の範囲を規定した。さらに、①運送状の記載項目として「積込料」、「取卸料」、「待機時間料」などの料金の具体例を規定。②料金として積込みまたは取卸しに対する対価を「積込料」および「取卸料」とし、荷待ちに対する対価を「待機時間料」と規定。③付帯業務の内容として「横持ち」、「縦持ち」、「棚入れ」、「ラベル張り」、「はい作業」などを規定した。

国交省では、これらの改正によって運送の対価としての「運賃」および運送以外の役務などの対価として「料金」を適正に収受できる環境整備を図る、としている。

「運賃」の規定では、「車両による発地➝着地の荷物の移動」となっている。この対価が運賃である。また、従来は発荷主や着荷主のところで「車両留置料」とされていたものが、発荷主では「待機時間料」と「積込料」に、着荷主では「待機時間料」と「取卸料」という料金にした。さらに発荷主や着荷主のところで、それぞれ「附帯業務料」とされていたものは、発荷主のところでは「はい作業」「荷造り」「出庫仕分け」「検収・検品」「横持ち・縦持ち」などとなる。同様に着荷主のところでは「横持ち・縦持ち」「検収・検品」「入庫仕分け」「はい作業」「ラベル貼り・棚入れ等」となる。

従来は「運賃」の中に積込みや取卸しなどの荷役料、待機料、附帯作業料が含まれていた。だが、「運賃」は荷物を発地から着地まで運ぶ(移動する)対価と規定した。それ以外は「料金」として請求できるような契約にすべきだ、ということである。

だが同時に懸念されることもある。まず第1には、「適正」な運賃と諸料金が実際に収受できるかどうか、という点である。これには荷主と事業者の力関係という問題がある。また、中には諸料金を取りませんと「抜け駆け」する事業者がいないとは限らない。

第2は事業者側にも難しい課題が生じたことだ。それは「適正」な運賃や料金とは何かである。「適正」とは原価に照らして、ということになろう。そこで原価の算出を再検討しなければならない。

「運賃」は、算出された原価+一般管理費+適正利益となる。換言すると、適正な「運賃」で総ての原価と適正な利益が賄えることになる。

つまり運賃原価計算のコストには待機時間の対価や荷役作業料などは含まない。逆に、待機時間料を算出する原価には減価償却費などは含まれない。「運賃」で賄ってしまっているからだ。また、ドライバーの1日8時間労働に対する賃金分は適正な「運賃」のコストに含まれているので、待機時間料の原価はドライバーの残業割増の人件費が基本になる。なかには冷凍機を稼働させておかなければならないようなケースもあるので、その場合には待機時間に消費する燃料費なども含まれてくるが、償却費などは待機時間料の原価には含まれない

「運送」の対価としての適正な「運賃」で原価を賄うとすると、荷物を積んでの走行(運転)時間がかりに6時間だったとしても、ドライバーの8時間分の賃金が含まれることになる。また、かりに2時間の待機時間に対する待機時間料にドライバーの2時間分の残業割増の人件費が含まれているとすると、ドライバーの運転時間(6時間)と待機時間(2時間)の合計が8時間であっても、賃金分は8時間+2時間の残業代となる。

同じように荷役料は、実際にはドライバーが荷役などの作業を行うとしても、ドライバー以外の作業担当者が行うことを前提にコスト計算することになる。 このように、標準貨物自動車運送約款の改正に伴って原価計算の仕方も抜本的に見直さなければいけなくなる。