運ぶものを自分で創り社員の待遇改善を進める


渡利商事(渡利憲一社長)は渡利社長が1998年に19歳で創業した。しかし、年齢が若いために社会的信用などの関係から、創業当時は父親を社長にして、実質的には自分が経営をするという形をとった。2000年には運送事業許可を取得し、2002年には利用運送も行うようになった。

現在は4tウィング車と4tゲート車をメインに保有台数は60台、社員数80人(うちドライバーは60人)の規模にまで発展してきた。また同社には旭東興運(本社同)という運送事業のグループ会社がある。これは4年前に買収した運送会社で、トレーラと大型車が15台あり、社員数は13人(内ドライバーは12人)いる。

その他にも中国の上海にケイプランニングと渡利質量検測というグループ会社がある。このうちケイプランニングは、現地の不動産賃貸の斡旋と管理を行う会社。主たる顧客は上海に進出している日系企業という。また、渡利質量検測は、日本企業が中国の工場で製造した商品を日本に運ぶ前に現地で検査・検品業務を行う会社である。「グループ会社の渡利質量検測が検査をして、検査にパスした商品を、渡利商事では日本国内で保管してオーダーに基づいて出荷するという一貫した業務を行っている」(渡利社長)。

渡利商事単体としての事業のメインは、大手宅配便会社のハブ間輸送、ハブ~営業所間輸送である。この宅配便会社の仕事が売上の約60%を占めている。拠点間の幹線輸送といっても受託業務のエリアは関東圏内にしている。労働時間などの関係があるからだ。

それに対してグループ運送会社の旭東興運ではトレーラを増やしていく方針である。たとえば建材関係の仕事では、北陸から引き取って長距離輸送で運んで、関東圏内へのデリバリーなどを行っている。だが、労働時間などの関係もあって、今後はトレーラによる中継輸送を構想しているからである。この中継輸送システムを導入すれば、宅配便の拠点間輸送でも受託する業務の範囲を拡大できる。

話を渡利商事に戻すと、宅配便の幹線輸送以外では飲料や食品関係などの仕事をしている。このうち飲料関係では、大手飲料メーカーのサテライト拠点の役割もしている。荷主の羽生支店から同社の倉庫に横持ち輸送し、サテライトとして保管をする。さらに草加、八潮、川口などにある問屋や大型小売店の拠点、自販機による飲料販売会社などに納品するという業務である。

また食品関係では、取引先の工場でスティック状の袋に中身を充てんしたものを、工場から引き取って同社の倉庫に運び、袋詰めなどの2次加工をして保管。オーダーに基づいて出荷する、といった業務をおこなっている。なお、食品の流通加工などをしているクリーンルームは食品衛生法の許可を取っているが、「昨年10月にはさらに化粧品と医薬部外品の製造許可も取得した」(渡利社長)。今後の新たな事業展開のために必要だからである。

その他、渡利商事が行っているユニークな仕事としてはイベント関係の仕事がある。コンサートツアーで必要な機材を会場に運んだりする仕事で、トラックドライバーというよりも、ほとんど「業界人」的な感覚で仕事をしているようだ。だが、10t車2台で行っているので売上構成比としては低い。

同社では加須と川口に倉庫があるが、これらの保管機能も活かして、「自分で運ぶものをつくりだして一貫した業務を行うようにすることで付加価値の高い事業展開をしていく。そうすることで従業員の待遇改善も実現していきたい」(渡利社長)という。