社員が「働いていて良かった」と思える会社に


田中総業(田中敏士社長)は、運輸事業、パッケージ事業、サロン事業を行っている。運輸とパッケージは物流事業だが、サロン事業部もあるのは珍しい。

田中総業の設立は1990年で、田中社長が運送業を始めるまでの経緯が変わっている。「そもそもは寿司屋の板前だった」(田中社長)のである。その後、鮮魚店を始めてスーパーの店舗にテナントとして入るが上手くいかず、「アルバイトでトラックに乗ることが始まりだった」(同)という。

だが、結果的には寿司屋での修業が役に立った。「掃除や片づけが体に染みついてていたので、荷物の輸送先で掃除などをしていたのを納品先の社長に見初められた」(田中社長)。そこで当時はまだ営業許可の取得が厳しかったが、専属的に輸送業務を請けることになったという。

また、荷主の廃棄パレットを中間処理場まで運ぶようなこともあったので、埼玉と東京で産業廃棄物収集運搬の許可も取得(現在はほとんどやっていない)。だが、「運送が嫌になった時期があり、サロン事業を始めた」(田中社長)。サロンは2店舗あり、ブライダル・エステを主に行っている。その関連でオーダーメイドのサプリもネット販売している。サロン事業は売り上げ全体の10%ほどで、いずれは別会社化を考えているという。

売上構成は運輸事業が70%、パッケージ事業が20%、サロンが10%である。従業員数は全体で65名(パートを含む)。運輸事業部は保有車両が35台で、1課、2課、3課からなっている。1課は冷凍冷蔵食品輸送で運輸事業の売上の70%を占める。2課は一般貨物やドライ食品の輸送で運輸事業の20%。3課が建設関係の輸送で運輸事業の10%となっている。

パッケージ事業部ではセメントの保管などもしているが、主たる業務は梱包作業などである。ギフト品販売会社が取引先で、このギフト会社の関東エリアの物流センターという役割を担っている。「ギフト品はブライダルの引出物が主で約90%を占める」(田中社長)。もちろん、その他に中元・歳暮、仏事などもある。

同社にギフト商品が納品され、流通加工や包装などの作業をして納品までを請けている。パッケージ事業部には、ギフト商品につける熨斗紙の印刷用に、「オンデマンド印刷機も備えている。届け先は関東一円のホテルや式場」(田中社長)だ。

田中総業では、「この会社で働いていて良かったな、と思われる会社にしたい」(田中社長)というビジョンを描いている。その実現のためには様ざまな取り組みが必要だ。たとえばコンプライアンスでは、毎月1回、外部の第三者に監査してもらっている。そして「法令順守の面で何か指摘があればすぐに直す」(同)ようにしている。コンプライアンスだけではなく、同社では、経営コンサルや教育コンサルも導入して会社のレベルアップに努めている。

「社員とその家族を守る」という志をもち、それを実現するには計画が必要だ。そこで田中総業では、理念実現のための「経営計画書」に基づいて事業展開をしている。「経営計画書では5年、10年先の会社と従業員の給料や処遇を明確にしている」(田中社長)。経営計画書は現在のところ管理職だけしか見られないが、「来年7月(決算が6月)からは全社員にオープンにしていく」(同)予定である。

さらに田中総業では、企業規模を100台ぐらいまで拡大し、「ホールディングスにして30台ぐらいずつ分社化する」(田中社長)ことも計画しているという。