日本サニテイション(植田和実社長)は、産業廃棄物収集運搬処理をメイン事業にしている会社である。会社の設立は古く1957年にさかのぼる。東京都一般廃棄物処理業許可(収集運搬)、東京都産業廃棄物処理業許可(収集運搬)、さらに東京都産業廃棄物処理業(中間処理)の許可も取得し、大田区京浜島に中間処理施設を持っている。
だが、現在の経営陣になってからは1年余に過ぎない。貿易会社のウエダ(世田谷区、植田和実社長)が、同社を買収したのが昨年の9月1日。ウエダはコーヒー豆やリップクリーム、農薬、鉄鋼などの貿易業務を行っている会社で、経営者同士の個人的な関係からM&Aをしたようだ。植田健取締役は、「最初私には弊社には関わらせないと言われたのですが一週間私が父を口説いたので」、日本サニテイションの常勤取締役を引き受けた(ウエダの取締役も兼任)
産業廃棄物収集運搬の事業は労働集約型産業である。貿易業とは全く違う業界だ。それに「貿易は請求書を毎日起こすわけではない」(植田取締役)。そこで「朝の5時半にドライバーを送り出し、コミュニケーションをとるようにした」(同)。同時に、自社の長所や短所、競合各社の特徴、市場の分析などを進めた。その結果「アンダーグランドのイメージがあるが、そこに入らざるを得なくなったのなら業界イメージを変える」(植田取締役)と決意した。まずは足元のビジネスを変え、そして業界イメージの刷新である。
植田取締役は「営業部長を募集したら6週間で206名の応募があり、そのうちの40人強と面接をした」という。ネガティブなイメージから脱却するために考えた、「あなたの一手が業界をも変える」というキャッチフレーズが奏功したようだ。このようなことから「小学生がなりたい職業の10位以内にしたい」(植田取締役)という目標をもって取り組んでいる。そのため、「12月初旬に納車予定の新しいパッカー車には、地元の小学校に持ち込んで小学生に絵を描かせてみよう」(同)といった試みも計画している。
併行して足元の改革も進めている。休憩室にはアロマの香りを漂わせ、飲料やカリカリ梅なども揃えるようにした。従業員数は90人(うちパートが4人)。自社の保有車両はパッカー車4台、2tならびに4t平ボディ車など全部で30台だが、仕事はあるのでドライバーが入れば増車しても良いという。
営業面でもこの間、新規取引を増やしてきた。「既存の取引先の売上を増やすとともに、人脈を活用してセット売りで新規取引も開拓している」(植田取締役)。セット売りとは、たとえば古紙からトイレットペーパーにする製紙会社と提携し、「古紙の回収で利益を得るとともに、古紙の排出元にトイレットペーパーを廉価で販売する。排出企業は環境にやさしい企業としてアピールできる」(同)、ということになる。
経営面では自社の中間処理施設の収益性を高める。許可品目、処理量ともにまだキャパシティに余裕があるので、フル稼働させるようにする。またM&Aにも力を入れる。後継者問題などを抱えている同業者は多い。そこでドミナント式にM&Aを展開し、都内そして関東圏で事業を拡大する考えだ。さらに海外展開としてはベトナムに注目している。「自分の手でベトナムをきれいにしたい。なるべく早くベトナムでの事業に着手したい」(植田取締役)。
このような事業展開を通して、「社員がプライドをもてる会社、引いては業界にしたい」(同)という考えだ。