鷹来興運(椚鷹平社長)の創立は2013年3月なので、まだ5年余と若い会社である。社名の鷹来は「たから」と読む。
椚社長は、元もとは型枠大工として建築関係で働いていた。 その後、「少人数の運送会社で1年間だけドライバーとして働いていた」(椚社長)のだが、独立して自分で運送会社を始めることになったのである。 本当はドライバーとして勤めた小さな運送会社を、「自分で大きくしようと考えていたが、経営の実態がかなり厳しかった」(同)。 その運送会社は、あたかも頑張れば経営を譲るかのような甘言で採用して働かせたようだ。
それはともかく、椚社長はなかなか商才がある。自分で事業を始めた時には運送業としてではなく、 「農家の作業を手伝うような仕事」(椚社長)として契約し、農作業の手伝いの一環として収穫した野菜を農協にトラックで運ぶ、という方法をとった。 これなら運賃をもらうことにはならない。しかもその間、4人を雇用して運送会社に派遣しながら運送の仕事を覚えさせている。そのようにして事業許可を取得して創立したのである。
運送事業をスタートした時の車両は小型トラックが1台と、中古のライトバン(青ナンバー)が4台で最低保有台数の5台とした。 以前に働いていた建築会社から仕事をもらい、ライトバンでは建築現場で使用するレンタル品や機材などを運んだ。 そして貸切の仕事が確保できるたびに1台ずつライトバンを廃車してトラックを導入するという方法で徐じょに運送会社らしい形をつくってきたようだ。
現在の保有台数は13台で、車両の内訳は小型車が5台でいずれもゲート付きドライバン車。 中型車は7台で、ドライウィング車1台、ユニック車1台、冷凍・冷蔵車5台である。 また、大型車はドライウィング車が1台。このうち、4tユニック車は昔の建築会社から型枠材や足場材などの仕事を請けている。
4t冷蔵・冷凍車が多いが、これは冷凍食品の仕事が多いからである。鷹来興運の売上の約50%は食品関係の仕事になっている。 これら冷蔵・冷凍車で行っているのは、食品メーカーからスーパーの物流センターに納品するような業務である。 次に多い仕事はリネン関係の仕事だ。これはクリーニング済のタオルをスポーツジムなどに運ぶもの。 逆にスポーツジムなどからは、使用されたタオルを回収してくる。同社ではこのリネン関係の仕事を2t車3台で行っており、売上の約30%になっているという。
また、建築関係が売上の約10%を占めている。 運んでいるのは建築資材やレンタル機器、仮設事務所、ガードマンボックスなどである。その他、足場や型枠材なども含めて、建築関係では現場が終われば回収する仕事も多い。 その他、アート引越センターの仕事を繁忙期だけ手伝っている。作業は行わず、運送業務だけの仕事である。
鷹来興運の定期の仕事は埼玉、東京、千葉、神奈川の首都圏エリアで、スポットの仕事でも群馬、栃木、茨城の北関東と、福島、静岡が輸送範囲である。 したがって、「8時間から9時間で帰ってくる」(椚社長)という。そこで、「2時間ぐらいの仕事があれば、ドライバー同士がお互いに調整し合って通常の仕事にプラスする」(同)といったこともしている。
椚社長は営業所を開設したい、と考えている。 建築資材を預かってもらいたい、といった荷主からの案件もあるので、「倉庫のある物件で保管を兼ねた営業所を出したい。 銀行からの融資枠も確保できているので、今年は具体的に始めたい」(椚社長)という。そのためにはドライバーを確保することが前提となる。