S.P.C.Port(加藤剛志社長)の会社設立は2014年8月である。
加藤社長は20年近く佐川急便でドライバーをしていた。「ずっと佐川で働くつもりだった」(加藤社長)のだが、群馬県に住んでいた母親の死に会えなかったことを悔やみ、会社勤めを辞めて独立することにした。だが、さらに自分の病気療養などを経てからの会社設立となった。
軽トラックによる運送からスタートしたが、大田区六郷などの地域は佐川急便時代に担当していたエリアであり、旧知の荷主なども多かった。そのような荷主から運送依頼などもあり、軽トラックではできないので一般貨物運送の許可を申請し、2015年の暮れからは一般事業に参入した。
地元には運送会社も多数あり、佐川急便のドラバー時代からの知り合いの経営者も多い。一般事業を始めるに当たっては、これらの事業者の何人かに相談をしてアドバイスをもらったり、協力を仰いだりもした。だが、地元事業者のほとんどは古くから運送事業を営んでいて、相談などをした人たちはたいていが2世経営者だった。その人たちと接していて、「自分は創業者ということを実感した」(加藤社長)という。
そして「ニーズに応えることでしっかりした運賃をもらい、働く人たちに分配する」(加藤社長)という会社の基本的な考え方を掲げることにしたという。
一般事業を始めるに当たっては最低保有台数の5台を、3台はリースにして、2台は地元の事業者から譲りうけたりした中古車でそろえた。利用運送は以前から行っていたので、事業許可を取った時点では荷物は自分で持っていた。さらにセールスドライバーの経験も活かして荷物の開拓も進め、一般運送の事業許可を取ってから2年2、3カ月経った現在では保有台数を17台にまで増やしてきた。内訳は4t車2台(うち1台は保冷車)、2t車9台、1t車1台、軽トラック5台である。
輸送品目は建材25%、食材20%、雑貨20%、その他となっている。契約形態は常用が50%でスポットが50%という割合。また自車両と傭車の比率では、売上の60~70%は傭車となっている。スポット的な荷物も含めると、運送を委託している事業者は270社ほどあるという。
労働時間とコストの問題から、基本的には近場の仕事を自車両としている。ただし、「チャンスがあれば関東~関西はやってみたい」(加藤社長)という。その際には関西に営業所を置くようなことも想定される。
また、ドライバーの定着率を上げるために、賃金はみなし残業の80時間を含めた固定制にし、80時間を超えれば残業代を支給する。
さらに、「少ない労働力で多くの収入を得るにはどうするか」(加藤社長)という観点から、「今年の夏からは『物流市場』を立ち上げる計画」(同)という。簡単にいうと「物流市場」は、同社が荷主を開拓して、その荷物を実運送事業者に流すシステム。事業者がアクセスしてきて、同社と事業者が交渉して仕事を出す。その際に、「その荷物をいくらなら運ぶかを事業者に言わせる」(同)というもの。条件が合えばその事業者に荷物を委託する。
いずれは事業者を登録制にして、コンプライアンスも含めて会員制にする。そして「事業者とのパイプを太くして、将来的には荷物を往復セットで出せるようにしたい」(加藤社長)という考えのようだ。