AK-transport(小野敦社長)の設立は2012年で、最初は利用運送からのスタートだった。2014年には一般貨物自動車運送事業の許可を取得して実運送を始めた。
小野社長は創業者で、「友人の紹介で20歳からドライバーとして働いてきた。長距離輸送のドライバーも経験している」(小野社長)。実は小野社長の実家は長年続く美容院で、美容学校を出て美容師になるはずだった。しかし、ドラマーとしてバンド活動をしていた関係などもあって実家は継がず、トラックのドライバーになったのがキッカケで運送会社を創業したという経緯がある。
運送許可を取得して最低保有台数5台で実運送を始めてから4年余だが、現在の保有台数は42台にまで拡大した。短期間に8倍強の保有台数に成長してきたことになる。従業員数はドライバーだけで41人である。
同社の地元には自動車メーカーの工場や大手印刷会社の工場など、大きな工場が多数ある。このような立地条件に恵まれた同社では、自動車部品、加工食品用の各種容器(印刷された紙製品)、食品、自動車用タイヤなどを運んでいる。売上構成比でみると印刷物が約3分の1、自動車部品関係とドライ食品が3分の1、イベント関係20%強、その他である。
このうち自動車部品関係では大手事業者の倉庫で集約された部品を、自動車メーカーの狭山や寄居の工場に定期で輸送している。一方、タイヤは朝の8時半に地元の自動車工場に納品すると、すぐにタイヤメーカーの福島工場に向かって出発して昼過ぎに到着。工場でタイヤを積んだら夕方には会社に帰ってきてトラックに積み置きし、翌朝8時半に納品するというサイクルである。
また、ドライの加工食品は、地元から荷物を積んで三重県の鈴鹿に運び、帰りは鈴鹿から荷物を積んで地元に帰ってくる。途中で休息をとるので2日運行の仕事だ。
印刷物は狭山にある大手印刷会社の工場で夕方に荷物を積み、積み置きして翌朝の出発となる。荷物は紙容器に商品名などが印刷されたもので、食品などの容器として使用される。納品先は大手の菓子メーカーや飲料メーカーの工場などである。地元埼玉県内をはじめ、千葉、東京、神奈川などの関東圏、長野、新潟、宮城、また中京や関西方面では愛知、岐阜、滋賀、京都などにも輸送している。近場は4t車、遠方は大型車で運ぶことが多い。
同社の仕事の中で、他社と少し変わっているのはイベント関係の仕事だ。取引先は大手制作会社で、歌手やバンドなどの公演に伴って必要な楽器やアンプ、スピーカーなど、演奏に使われる機材を運搬する仕事である。名前は割愛するが有名なアーティストの仕事をしているという。イベント機材の輸送を担当しているドライバーは「業界人」的な雰囲気を体験できる。だが、コンサート会場に機材を運ぶと一たん会社に戻ってきて、一般貨物の輸送に携わり、コンサートの終了に合わせて再び会場に行って機材を積み、次の会場に運ぶというパターンである。
同社は短期間に急成長してきたが、「東京オリンピックまでは増車はしない予定」(小野社長)という。オリンピック以後の景気動向が不透明なので、ここ2年間は事業拡大よりも、計画的に経営基盤の安定に努めるようだ。
そして「当社のコンセプトは友人を呼べるような会社にしよう」(小野社長)で、給料や待遇もそれにふさわしい水準を目指している。実際に「ドライバーの60%ぐらいは縁故入社」(同)となっている。