耳に痛いことを言ってくれる人を信じよ①

経営には客観的な判断が必要


経営者は物事を客観的に観ることが必要だ。あるいは、常に客観的に物事を観るように努めなければならない。

とくに大きな経営判断をしなければならない場面では、外部要因や内部要因などあらゆる条件や要素、可能性などを熟考し、できるだけ客観的な視点から経営判断をしなければならない。

経営において主観的な判断は危険である。とりわけ希望的観測や願望で判断してしまうと、企業を取り返しのつかない事態に陥らせてしまう結果にもなりかねない。また、最悪のシナリオも想定しておき、どのような状況で推移した場合には、どのように対処すべきか、といったことを常に頭の中でシミュレーションしておくことが必要である。

そうはいっても、人間である以上は全く主観を排除するということは不可能だ。どんなに客観的に判断しようと努力しても、無意識のうちに多少の感情や願望などが入ってしまうことは避けられない。だから、企業経営にはドラマがあり、ロマンもあるといえるのだろうと思う。

だが、可能な限り客観的に自社や経営を見ることが必要だ。とはいっても、自分あるいは自分たちだけでは限界がある。それを補うために、外部の評価を参考にするのである。

その一つが業界紙誌などの活用である。

一般紙や経済紙誌などは影響力がある。そこまでの媒体力がない業界紙などでも、使い方によっては利用価値がある。

むしろ業界紙などは社外に向かってよりも社内に向かって活用するツールと考えればよい。昔に比べると電波放送媒体やインターネットなどの通信手段が発達し、情報チャネルは多様化した。しかし、活字に対する信頼性や影響力もまだまだ侮れない。

このようなことから、優れた経営者は業界紙などを社内向けに活用する。あまり評判の良くない業界紙では逆効果になってしまうが、その業界では一定の評価を得ている業界紙なら、外に向かって、というよりも社内的な効果を狙って取材に応じることもあるのだ。

たとえば、ある程度の規模の会社になると、経営者は自分の今後の構想などをリークして、社内の反応を見たりする。

インタビュー形式ではなく、取材源が特定できないような記事として書いてもらう。その記事に対する社内の反響などの結果をみて、場合によっては若干の軌道修正などをするためだ。とくに労務関係などシビアな内容については、取材源が特定できないような形の記事で、事前に観測気球を上げて社内の反応をみたりする経営者もいる。

あるいは大きな方針転換を考えていたり、新事業を構想している時なども同様である。

小規模な企業の経営者でも、優れた経営者は自分の考え方や新たな方針などについて、業界紙などの紙面を介して社内に伝達するという手法を採ったりする。直接、自分の口から社内に話すだけでなく、業界新聞や業界雑誌など外部が発行している媒体で、活字という客観性をもたせた形で社員に伝えるためである。自分が直接話をするよりも、その方が効果的なケースもある。

もっと積極的な利用方法は、自分たちでは気づかない自社の弱点や欠点などを指摘してもらうために活用する。客観的に判断する材料とするためだ。