経営者の孤独感につけ込むビジネスに要注意①

都合のよい情報しか入ってこない危険性


経営者は裸の王様になる危険性を常にもっている。誰も都合の悪い話を社長にしなくなるからだ。

これは社内の人間だけではない。取引先でも顧客は先方が優位な立場にあるので別であるが、仕入れ先などこちら側が優位性を保持できる商売上の人間関係では、みんな耳触りの良いことしか言わなくなる。

このように経営者は裸の王様になりがちで、孤独な存在なのである。

ところが、この孤独感に言葉巧みにつけ込んでくるビジネスがある。「素敵な洋服をきていますね」と持ち上げながら、「もっと豪華でお似合いの衣装をお作りしましょう」と近づいてくる人たちだ。それは一部(全部ではない)のコンサルタントと称するセールスマンである。

もちろん、コンサル能力が高く、モラルをもったプロフェッショナルなコンサルタントの方がたのことではない。そのような本当のコンサルタントの皆さんに失礼になるといけないので、最初に明確にお断りしておくが、ここでいう経営者の孤独感につけ込んで金を引き出すビジネスとは「コンサルタントもどき」のことである。しかし便宜上、コンサルタントと記すことをお許し願いたい。

取材先で、訪問先企業のコンサルタントと同席するようなケースがある。取材が終了した後などに、「たまたま今日はコンサルの先生がみえられているのでご紹介します。ご一緒にお茶でもどうぞ」、ということで社長とコンサルタントと3人でコーヒーを飲みながら雑談をしたりすることもある。

名刺を交換した時に、そのコンサルタントがどのような人か大体は分かる。第一印象でどうも胡散臭いなと感じると、たいがいは当たるから不思議だ。

3人で話をしていて、社長の発言にさりげなく追従するようなコンサルタントは信用しないことにしている。このような類のコンサルタントは珍しくはない。とくに物流分野ではけっこ多いといっても良いだろう。

これらのコンサルタントに共通しているのは、社長が分からないような、いかにも専門的であるかのような言葉や内容を少し交えながら、結局は社長の発言や考えを上手に持ち上げていることである。

この連載で以前に書いたことのある「半歩先」にも共通するのだが、社長が知らないような言葉や内容を少し交えながら、結論としては社長の意見を肯定する方向に話を持って行くので、社長としてはご満悦なのである。

このようなコンサルタントは、社長からすると良きアドバイザーとして信頼して頼れる「先生」ということになり、いつまでも契約が継続されることになる。コンサルティングも商売には違いないのだから、このようなコンサルタントは商売上手ということになる。

ただし、ノウハウという点ではなく、いつまでも契約を引き延ばすための商売が上手という意味である。