AI化や自動運転の行く末に対する素朴な疑問


ウーバーテクノロジーズの自動運転車が3月18日、米アリゾナ州フェニックス近郊で走行実験中に歩行者をはねる死亡事故を起こした。走行実験中の自動運転車による死亡事故は初めてという。

また、開発中の自動運転車による事故では、ウーバーの死亡事故の約1カ月前の2月14日、グーグル社も米カリフォルニア州マウンテン・ビューで走行実験中の自動運転車が路線バスと接触する事故を起こしている。走行実験中の事故は過去にも起きているが、これまでは総て「もらい事故」だった。だが今回の事故は、自動運転車側の過失によって発生した初めての事故となった。

周知のように自動運転には、自動化のレベル0からレベル5までの定義がある。レベルごとの定義については省略するが、当面はレベル4を目指すのが現実的だろう、という意見が多い。レベル4は高度自動運転で、特定の状況下だけ加速・操舵・制動の操作を総てシステムが行い(たとえば高速道路上のみなどの条件)、その条件が続く限りはドライバーが全く関与しない状態である。

それに対してレベル5は完全自動運転で、想定できる総ての状況下および極限環境での運転をシステムに任せる状態である。日本政府は2025年を目途にレベル5の完全自動運転を目指している。 もしレベル5の自動運転車が実用化すると、トラック運送業界の様相も大きく変わることが予想される。

一方、倉庫や物流センターなどのAI化も少しずつ実現化してくるものと思われる。

物流センターのAI化で多くの人の意見が一致するのは、メーカー物流など川上の方が先行するだろうという点だ。工場のAI化の延長、応用として、メーカー物流の方が実現性が高いという見方である。

だが、いずれは川下にもAI化が進んでくるだろう。その際、小売業などは無人店舗化など、店舗におけるAI化には力を入れて開発投資をするが、店舗まで商品を運ぶ過程のAI化には投資しないはずだ。逆にいえば、これは物流事業者にとってはチャンスで、事業者側がAI化を進めれば新規荷主開拓の強い武器となる。

いずれにしても自動運転や庫内作業のAI化は、事業者にとっては省人化、効率化になることは間違いない。このうち自動運転化は自動車メーカーなどの技術開発の結果に依存するしかない。メーカーなどが開発した自動運転車を購入して使用するしかないからだ。

それに対して庫内作業のAI化は、機器の製造はメーカーに任せるとしても、現場の実態に応じたアプリケーションの開発などはメーカーと共同で進めることが可能である。

このように、物流に限らずあらゆる産業・社会分野でAI化など省人化がますます進んでくることは間違いない。だが、開発者はその行く末を考えているのだろうか。

日本の国内だけを見た場合でも、人口減少が進むとはいってもAI化によって生じる余剰人員は人口減少を上回るペースになるだろう。ましてや世界的にみれば、アジアやアフリカでは人口が増加する。

すると、AI化で職を失う人たちが増え、その人たちの収入はどうなるのか。メーカーが少ない人でたくさんの商品を作り、物流会社が少ない人で商品を運び、小売店が少ない人で販売しようとしても、働く人(収入のある人)が少なくなれば、需要は減少する。

つまりAI化の行き着く先は、自分で自分の市場を縮小することになる。努力すればするほど、自分のマーケットを喪失する結果になりはしないだろうか。