今年ももうすぐ半年になろうとしている。この間、多数の中小事業者を訪ねて取材してきた。だが、「持続的景気拡大」を実感している中小事業者は少ない。
それでも現状の荷動きが悪いということではない。むしろ、新しい仕事があっても、増車しないで傭車に回すような傾向がみられるので、景気としては、まずまずといったところであろう。
自車両ではなく傭車にするのは、もちろんドライバーの確保が難しいといった事情が影響していることも否定できない。だが、それだけの理由ではない。ドライバー確保難は傭車先も同じである。それよりも2020年の東京オリンピック・パラリンピック後には景気が後退するのではないか、という懸念が強いからだ。オリンピックまでは現状で行っても、その後は景気が後退するだろう、といった見方をする中小事業者が多いのである。
中には、自社で運んでいる商品の国内市場が現在より30%も減少する、と予想している事業者もいる。これは荷主業界側の需要予測を基にした見通しだという。
売上の約70%が建築用資材関係というある事業者は、戸建住宅や集合住宅用の建築資材メーカーなど数社の荷主と取り引きしている。荷動きは良いというが、積極的に仕事を拡大して増車しようとは考えていない。これ以上、建築資材関係の売上構成比を高めるとリスクが増えるからだ。さらに、東京オリンピック後は景気が後退し、また国内市場の縮小も進むと予測している。
そこで自然増の仕事は傭車で対応し、当面は様子をみているという。もちろん建築資材関係以外の業種の荷主の新規開拓を進めるが、平ボディやユニック車という現在の経営資源を生かせる分野の荷主を対象に絞り込んでいる。
一方、精密機器輸送を得意としているある中小事業者は、売上の約3分の1が精密機器関連だ。納入先での搬入・据え付け作業もあるので、ほとんど2マン運行である。この間、設備投資が増えているため事業は順調だが、このままの状況が続くとは思っていない。目安は東京オリンピックで、それまでに別の輸送分野で事業の新しい柱をつらないといけないと考えている。
昔のような増産のための設備投資ではなく、現在は効率化のための設備投資で仕事が増えていると分析しているからだ。さらにオリンピック以降は設備投資の勢いも変化してくると予想する。そこで2020年ぐらいまでに、もう1つ事業の柱をつくることが必要というのである。
北陸地方で一般トラック以外にダンプを保有しているある事業者は、新幹線の金沢からの延伸工事で地元での仕事はあるが、東京オリンピックを境に状況が大きく変わると予想している。地元における新幹線関連の仕事は2020年以降も当分は続く。だが、オリンピック後は全国的なダンプ輸送市場の需給関係が変化すると考えるからだ。
これはダンプに限らず一般貨物も含めてだが、ドライバーの確保や運賃水準が変化してくる。とくに運賃については、オリンピック後は一般貨物も含めて現在のフォローの風から一転してアゲンストになるだろうと読んでいる。
このように東京オリンピック・パラリンピックを境に景気後退を懸念して増車などの投資を控えている事業者は多い。