前回は「各業種で進む荷主の『物流アライアンス』」を書いた。最近は各業種で荷主の物流アライアンスの構築が進んでいる。前回の記事がUPされて以降も、荷主の物流共同化などのリリースがいくつか流れてきている。このように荷主の物流アライアンスは、各業種に拡がりつつある。
これは国内市場の縮小に対する荷主企業の物流対応であり、今後、さらに様ざまな業種で荷主の物流共同化が進んでくるに違いない。
一方、物流事業者側でもM&Aや業務提携などが進行している。これら事業者の合従連衡などについても、大手事業者がらみならニュースリリースで確認できる。それに対して中小事業者同士のM&Aや業務提携などはなかなか見えにくい。だが、いろいろ取材をしていくと、けっこう発見できるケースもある。中小事業者同士のM&Aはあまり表面には出てこないが、最近は意外と多くなってきている。
たとえば、業界団体の各種会合などで久しぶりに顔を会わせた経営者などから、「会社を譲渡したいという事業者をどのように探せばよいだろうか」といった話が、けっこう持ち込まれるようになってきた。中小事業者でも、積極的に同業者を買収して事業を拡大しようと考えている経営者が増えている証左だ。
なかには、この4年余の間に20社を買収し、4年前の売上高28億円(当時は単体売上)から140億円(その間にホールディングスを設立しHD傘下の事業会社の単純合計)と、約5倍の売上規模になった事業者もいる。
一方、正確に把握はできていないが、最近は事業から撤退する中小事業者も増加しているのではないかと推測される。理由は様ざまで、後継者問題、事業の先行きへの不安、労働力の確保難、コンプライアンスへの対応能力の欠如、などであろう。
もちろん、それとは反対に事業を伸ばしている事業者もいる。事業を伸ばしている事業者には3つのケースがあるように思われる。
1つは先述のように積極的な企業買収などで短期間に売上規模を拡大しているケースである。2つ目のケースは、自社のコアビジネスで既存取引先との取引額を拡大したり、新規取引先の開拓に成功している事業者だ。これは正攻法での事業展開といえる。そして3番目は、新サービス(あるいは自社としては新規サービス分野)への参入である。マーケットが変化している今日、その変化を上手に見抜けば事業拡大につながる。国内市場が縮小しても伸びる分野は必ずあるので、有望市場への進出といえる。
このように、マーケットである荷主業界の物流共同化などの流れ。他方ではサービス供給側である物流業界の再編成が、最近、同時進行で目立つようになってきたのである。
これはなにを意味するのだろうか。正確な解答はまだ得られていないが、2020年の東京オリンピックが、日本経済にとっての大きな転換点になるのではないかと推測している。その転換点に向かって、荷主業界も物流業界も業界再編成や経営再構築が急速に進行しているからだろうと思われる。しかも、これらの動きは加速化している観がある。
これからの企業間競争に勝ち残るには、外的要件の変化に対応して、内的要件を組み立て直さないといけない。それも、この2年間が勝負のような気がする。