傭車先のコンプラコストを保証できる運賃という視点も重要


関東運輸局は関東西部運輸(本社・千葉県野田市)に対して行政処分を行った。法令違反の内容は、著しい乗務時間などの順守違反、事業法に抵触する違反などである。処分内容は関東西部運輸の本社営業所の一般貨物自動車運送事業を7月18日から30日間の事業停止、本社営業所の配置車両を50日間使用停止にするというもの。

西部運輸のグループ本社は広島県福山市にあり、地域ごとに分社化している。同社のホームページによるとグループの保有台数は1540台になる。このうち関東西部運輸はグループの中核である西部運輸に次ぐ台数の430台を保有するが、関東西部運輸の本社営業所にはそのうちの277台の車両が所属している。それだけの車両が50日間使用停止となると、同社の経営上のダメージはかなり大きいだろう。

また、ドライバー不足に起因するトラック不足の現状からすると、荷主などに与える影響もかなり大きいものと思われる。もちろん処分は前まえから予測できていただろうから、事前にグループ各社から車両を回すなどの対応はとっていただろう。だが、それでも300台弱の車両を完全にカバーするのは難しい。

そのようなことから同社に幹線輸送を委託していた大手事業者などには大きな影響があったものと思われる。既存の他の傭車先に、自社に回す車両を増やすように要請しても、どの傭車先もドライバー不足で対応できないだろう。ましてや新規に傭車先を見つけようとしても、たくさんの台数を新たに短期間で確保するのは難しい。

現実に地元の野田市近辺では大型車の需要が増えている、という話も聞いた。

処分を受けた事業者としては、一般論としていえば、このような事態に直面した時のリスクヘッジのために分社化している、という面があることは否定できない。端的にいえば、今回のような事態へのリスクヘッジとして分社化している。

それに対してむしろ元請事業者の方が、一時的には対応に苦労したのではないかと思われる。このような教訓から、元請事業者は傭車先の法令順守状況などをチェックする重要性が再認識されたのではないだろうか。

今回の関東西部運輸の行政処分問題から学ぶことは、多くの協力会社に業務を委託している大手元請事業者は、自社のコンプライアンスはもとより、傭車先の法令順守の実態なども把握しなければいけない、ということである。傭車先の行政処分によっては、業務に大きな支障をきたすことにもなりかねないからだ。

だが、大手事業者は自社のコンプライアンスのために、傭車先にしわ寄せしているという実態があることも事実だ。傭車先を犠牲にして、自社の法令順守を実現しているのである。したがって、傭車先の法令順守状況を把握するということは、同時に、コンプライアンス・コストを賄える適正な下請運賃を支払わなければいけないということでもある。