「荷待ち時間の記録義務づけ」と契約内容


6月1日更新の当欄で「『荷待ち時間』の乗務記録作成義務づけ」と題して書いた。

車両総重量8t以上または最大積載量5t以上のトラックでは、①集貨または配達を行った地点、②集貨(配達)地点に到着した日時、③集貨(配達)地点における荷積みまたは荷卸しの開始および終了の日時などについて記録し、1年間保存しなければならないという「貨物自動車運送事業輸送安全規則」の一部を改正する省令についてである。

また、前回は触れなかったが、国交省では併せて荷主勧告制度の運用の改善も図った。従来は最高速度違反や過積載運行、過労運転防止違反などにおいて荷主の関与が認められた場合、荷主にはまず「警告書」が出され、同様の事案が再発した場合には「荷主勧告(荷主名公表)」がなされる。さらに今度は、警告の前に「協力要請書」が新たに創設された。

このように荷待ち時間の乗務記録義務づけは喜ばしい。だが、荷主や元請事業者の一部には、これまで工場内や物流センター内で待機させていたトラックを、場外で待機させようとする可能性がある、といった懸念を前回は指摘しておいた。

「改正安全規則」は7月1日から施行になったが、新たにいくつかの課題が認識されるようになってきたので、今回はその点について考えることにしよう。

その1つは、たいていの契約書に時間の概念が入っていないのではないか、という問題である。車両総重量8t以上または最大積載量5t以上のトラックに限らず、小型車の近距離輸送でも契約書に時間を明記する必要性を指摘する声が改めて出てきた。貸切契約において月間稼働日数や1日の稼働時間が明記されているかどうか、という指摘である。

たとえば、月決めチャーターの契約書に日数や時間などが明記されていなければ、月30日稼働という解釈もできるし、1日の稼働時間も24時間かもしれない。24時間稼働では車両は1台の契約でも、ドライバーは2人で交代勤務にしなければならないことになる。

もちろん、1日の稼働時間には自ずと常識的なものがある、という意見もあるだろう。では、1日の常識的な稼働時間とは何時間か? 8時間なのか、ドライバーの最大拘束時間である13時間なのか。いずれにしても契約書の中に1日の稼働時間が明記されていなければ、1日24時間という解釈も成り立ってしまう。

つまり契約書に何t車1日いくらと明記されていても、1日の稼働時間が規定されていなければおかしなことになる。そもそも契約として成り立つのか、という問題でもある。

では、1日の稼働時間がドライバーの最長拘束時間の13時間という契約になっていたとしよう。その場合でも様ざまな問題が考えられる。

かりに何t車が1日いくらというチャーター契約で、1日の稼働時間が13時間となっていた場合、待機時間の記録義務づけとは関わりなく、13時間以内なら何時間の手待ち時間があっても契約上は問題がないことになる。

1日13時間の内訳は荷主に責任がないことになるだろう。その理由は、1日13時間の中で、10時間が待機時間で残りの3時間だけが荷役や走行時間だったとしても、契約通り1日分の運賃が支払われれば文句は言えないし、事業者も文句は言わないだろう。だが、待機時間や積込み、荷卸し、走行時間が1日12時間30分だとしたら、ドライバーは休憩をちゃんと取れないが契約上では荷主に責任がないことになる。一方、事業者は法令違反だ。

このような契約上の問題点がないかどうか、もう1度、契約書を見直す必要がある。1日チャーター契約といっても1日の稼働時間を明記しておいて、それをオーバーしたら追加料金を請求できるようにしておく。これは値上げではないがコンプライアンスとコストという点では重要だ。

このように今回の乗務記録義務づけは、小型車などにおいても契約内容見直しの契機とすべきである。