現在、運送業界が抱える課題は様々ですが、この先必要となる対策としては、会社のイメージを高め、多くの人を雇うことだけではなく、人々が必要とする企業になる必要があります。そのためには、「会社の周知」が欠かせません。 会社を周知するためには、会社がどのような考え方で活動し、どのような商品やサービスを提供しているのか、そして社会に役立っているのかということを多くの人々に知らせ、理解と信頼を得ることはとても重要です。これに欠かせない理念や技術のことをパブリック・リレーションズ(Public Relations)と言い、日本では「広報」と訳されています。
この記事では、プロモーション戦略としての広報の基礎知識と求められる要素について解説していきます。
<目次>
広報とは
パブリック・リレーションズの定義として、国際パブリック・リレーションズ協会(IPRA)では、「情報の自由な流れを促進し、すべての関係者の利益に資するものである」と定義しています。ほかにも、米国パブリック・リレーションズ協会(PRSA)では、「組織とその公衆との間に相互に有益な関係を構築するための戦略的なコミュニケーション・プロセスである」とされています。
また、日本パブリック・リレーションズ協会では、「組織体とその存在を左右する公衆との間に、相互に利益をもたらす関係を構築し、維持するマネジメント機能である」としています。このように、パブリック・リレーションズ(=広報)の定義は各国のPR団体や専門家、学者によって解釈が微妙に異なり、時代の変化とともに見直しが行われています。
はっきりしていることは、広報は、企業・団体のビジョンや商品、サービス、社会貢献など様々な情報を広く社会に知らせ、人々の理解を深めるとともに組織のイメージを高め、社会と健全で良好な関係を作り出す重要な役割を担っているということです。
広報と広告・宣伝の違い
パブリック・リレーションズの頭文字をとったPRは、広告や宣伝と混同して使用されることも多いです。パブリック・リレーションズと広告や宣伝は同じものだと思っている人も少なくありませんが、この両者は、その目的も、手法も、効果も大きく異なります。広告や宣伝は、新聞や雑誌での広告スペース、テレビ・ラジオではCM、Webサイドではバナー広告やテキスト広告などを購入し、主に製品やサービスの販売告知やメッセージを自社の責任で消費者にアピールすることをいいます。
これに対して広報は、経営方針や人事異動、機構改革、業務、催事、会社貢献活動などの多様な企業情報を素材として提供し、報道してもらうパブリシティ(活動)が中心となります。
費用さえ負担すれば、社会通念を逸脱しない内容であれば掲載されるのが広告ですが、広報では、情報に価値が必要ですが、ひとたび報道されると媒体を通過した客観的な情報であるため、消費者に対する信頼性は高く、会社への影響や波及効果も大きなものとなります。
さらに、広報は低コストであるうえに、多様な情報を発信することができる、他媒体でも取り上げられることがあるなど、広告とは大きな違いがあります。
ターゲットを明確にする
会社が発信する情報発信活動には、広報の領域と広告の領域があり、広報の領域だけでも、ターゲットは、顧客、一般消費者、地域住民、取引先、メディア、アナリスト、機関投資家、グループ従業員、就職希望者など、幅広い層に及びます。
発行目的やターゲット層をあいまいにしてしまうと、情報発信の体をなさないばかりか、余計な誤解を招いたり、会社イメージの低下にもつながりかねませんので注意が必要です。
運送業界の競争に打ち勝っていくためには、多様な側面から、ターゲットを明確にした訴求効果の高い戦略的な広報活動を実行していくことが求められます。
企業規模に応じた広報体制と課題の選出
広報体制は、数十名規模で広報活動を行っている企業から1人で全てを仕切っている企業まで、企業の規模や業種、上場であるか否かなどによって異なります。広報体制を見直していくには、現状を認識するための課題の選出から始めます。
課題の選出には、信用失墜やイメージダウンになる要素、会社に対する認識不足やイメージギャップの有無、競合他社とのイメージの格差や訴求力の不足・露出不足はないかなどを調べる必要があります。
課題の解決には、内容や状況に応じてさまざまな解決策を実行します。例えば、広報体制の見直し・整備、メディアリレーションズの強化などを実行します。また、企業イメージの浸透不足では、経営トップに対する広報活動への理解促進とトップ広報の強化、広告と連動したコミュニケーション活動の実施、ニュースレターなど情報発信ツールの開発・配布などが必要となります。
まとめ
今回は、プロモーション戦略としての広報(パブリックリレーションズ)の基礎知識について解説してきましたが、広報部門が担当する業務の領域は幅広く、どれも企業にとって重要なコミュニケーション活動となっています。一つひとつの活動が有機的、機能的に連動し、総合力が発揮できるように心がけることも大切です。