法人タクシーも個人タクシーも昨今は接客マナーの向上に努めています。
運転が荒く接客も粗暴な運転手はバブル期から比べると激減しました。
一方で運送業界は深刻な人手不足に陥っており、中でもドライバーの平均年齢が高いタクシー業界は定年や高齢で引退する人数に比べ新規に入る人数が圧倒的に少ない状況。
私は20代前半で業界に入りましたが、その年齢でタクシー業界に飛び込む人は非常に稀で、会社に入る後輩は大体20歳以上年上でした。
そんな人手不足が深刻なタクシー業界ですので、小さなタクシー会社は特に多少怪しい人でも積極的に採用している現状があります。
求職者の受け皿となっている側面がある一方で、未だに一部の接客不良者を撲滅できていない要因がここにあります。
加えて給与体型が歩合制である点も事態を余計面倒にしています。
タクシー会社が歩合制を取るのは別の機会に説明するとして、現状の給与体系では短距離のお客さんが続くと売上は下がってしまいます。
その鬱憤をお客さんにぶつけてしまう運転手が一部残っており、これが苦情事案に発展する事も多いのです。
確かに長時間タクシー乗り場でお客さんを待ったのちに短距離だと、その運転手さんの給料が少なくなるのは事実でしょう。
ただ、これは実に浅い物の見方だと断言できます。
同一地域内のお客さんの数は基本的には一定です。
タクシーはその一定数のお客さんをシェアして仕事をしている状態な訳です。
乗り場内の一日の需要の中に短距離のお客さんも長距離のお客さんも混ざっており、それをたまたま順番が回ってきたタクシーが順番にお乗せしていくといった具合。
短距離だったり長距離だったりしたお客さんだって当然人生を歩んでいる訳で、その日がたまたまその距離であった可能性も十二分にあります。
こんなのは当たり前ですが。
そのお客さんを一部の運転手の接客不良によって失ったら、タクシー以外の交通を利用するようになったらどうなるか。
可能性もろとも失う事になるわけです。
そもそもタクシー乗り場は短距離のお客さんを含めて順番が回ってくるので、長距離だけのお客さんしかいなくなったら、数時間待ってようやく先頭に回ってくるといった状態になります。
これでは全く仕事になりません。
一時の感情で語りがちですが、一歩引いた目で見ると短距離のお客さんがどれだけ有り難いかすぐに分かります。
どんな距離であろうとお客さんには気持ちよくご乗車頂いて、また利用したくなって貰えたらそれが巡り巡って自分に戻ってくるのがタクシー業界なんです。
出典:たくのり