第10回 カンフー・ヨガ


第10回 カンフー・ヨガ

 ドライバー求人サイト、ドラEVERをご覧の皆様こんにちは。或いは、こんばんは。
 窓辺のマーガレット、キョウキ・カンバーバッチです。

 2018年1回目の『えいがかんそうぶん』でございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 早いもので、もう1月も終わろうとしています。本当にあっという間ですね。
 先日大雪が降りましたが、ドライバーの皆様は大変だったのではないでしょうか? 私も通勤がとても大変で、辟易してしまいました。事故のないよう、雪道でも安全運転で走行してくださいね!

 さて、映画の話をして参りましょう。

 今年はさっそく嬉しい事がありましたね。ジャッキー・チェン大哥(大哥はジャッキーの愛称で、アニキ的な意味です)主演映画『カンフー・ヨガ』が、お正月映画として公開! 何て嬉しい事でしょう。ジャッキーの映画がお正月映画になる、っていうだけで景気が良くなった気がするのは私だけでしょうか? そんな錯覚を覚えてしまう程、私はジャッキー・チェンが好きなんです。

 小学生の頃、1番最初に観たジャッキーの映画は『蛇拳』でした。

 その時の衝撃は今でも忘れる事が出来ません。

「何だこの人は?!」

 香港のクンフー映画を観る事自体初めてだった私は、何か聖なるものを見てしまったような衝撃を受けたんです。いつの時代に撮影されたのかすら分からない、中国という異国の、ざらついた映像の中であり得ない動きをする超人たち!

 子供の私には、それまで受けた事のない、とてつもない体験でした。

 人それぞれ、クンフー映画の初体験というものがあると思います。私より少し上の世代になると、それはドラゴンことブルース・リーになるのでしょうし、少し若くなるとジェット・リーやドニー・イェンになっていくのかも知れません。

 でもいつだって、彼ら武打星(広東語でアクションスターを意味する言葉です)は私たちの心を熱く燃え上がらせてくれます。
誰がスタートでも、そこに違いはないのです。
 だって皆等しく、クンフー映画を愛してますからね。

 さて、そんな風にしてジャッキー・チェンにハマり、クンフー映画(武狭片)の存在を知った私は、当時の自分の観れる範囲で何とか多くのクンフー映画を観ようと努力します。時は90年代に入ろうかというところ。ビデオが隆盛を極めようとしていた時期の事です。しかし、田舎の中学生。行動範囲も狭く、お金もない。そんな私に映画の総てを教えてくれたのは、立ち読みの『ロードショー』と『スクリーン』等の雑誌と(『映画秘宝』や『この映画がすごい』が登場するのはもう少し先でした)、自転車を走らせて10分ほどのところにあるTSUTAYAだけでした。

 そのTSUTAYA、1階が別の本屋さんという形式で、土曜日は映画の雑誌、或いは『宇宙船』か『B-CLUB』を読んで、2階で映画を借りるというのが僕の大好きな休日の過ごし方でした。そんなに友達が多いタイプじゃなかったし、器用な人間でもなかったので、頭の中はほとんど映画の事ばかり考えているような少年だったと思います。

 クラスメイトがアイドルの話をしている時、僕の中ではかたせ梨乃さんが理想の女性だったりした時期もありました。今考えると渋すぎるチョイスですよね。

 ちょっと脱線したので話を戻しますが、当時は結構アクション映画をTVで放送していたんです。ジャッキーの代表作である『ポリスストーリー』何かも頻繁に放送されていたように思います。深夜帯にも今では考えられない程マニアックなクンフー映画を放送していたりもしたんです。記憶が曖昧ですが、ジミー・ウォングの『片腕ドラゴン』も観たような気がします。

 ジャッキーの映画がTVで放送される、と知った時なんかは、週頭からウキウキしてましたね。金曜ロードショー、土曜プレミアム、日曜映画劇場……映画は皆週末に放送されてましたからね。有名なジャッキー映画はほとんどTVで観たのですが、それだけでは足りなくなって、過去に主演した映画、ほぼカメオ出演のような映画など、当時自分で出来る限りのジャッキー映画を片っ端から観ました。普通ここまで好きだと自分でも空手を始めてしまいそうなものですが、何故か僕はそうならず、観る専門でしたね。

 ジャッキーの映画でクンフー映画を知り、そこからすそ野を広がっていきました。

 文献などで香港にはアクションスターが多数いる事を知ると、レンタルビデオ店の片隅に置かれているようなクンフー映画にも手を出すようになって、本当にたくさんのクンフー映画を観たと思います。それでも、本当に愛している人たちには遠く及ばないんですけども……。

 そういう訳で、ジャッキーに強い思い入れがある私にとって『カンフー・ヨガ』の日本お正月映画扱いは、単純に嬉しかったのです。

 『カンフーヨガ』。先ずタイトルが良いじゃないですか。『カンフー』と『ヨガ』です。分かりやすい! もう完全にジャッキーの娯楽映画だと分かるタイトルです。

 ここ数年ハリウッド映画は勢いがなく、資本がインドや中国にある映画が多く撮られてきました。『カンフーヨガ』もハリウッド映画ではなくボリウッド(ボンベイとハリウッドの造語)と呼ばれる映画に位置付けされる、中国・インドの合作映画です。

 ジャッキーはずっと変わらぬスタンスでハリウッドに挑戦してきて『ラッシュアワー』シリーズでようやく大ヒットを勝ち取ります。これは本当に凄い事ですよね。今度はそこからも抜け出して、求められる場所で求められる映画を制作している。しかも『カンフーヨガ』、主演作で過去最高額の興行収入だったそうなんです。もちろんインドでの公開が大きいところもあるのでしょうが、これって凄いですよ。肉体一つで全世界のスターになってる。

 最近のジャッキーについて、政治的な言動などから彼を嫌う人をいるかと思うのですが、出生の事やお国柄もあるので、そこは仕方がないところだと思います。でも彼の映画作品を観るとどうでしょう? たまに『新宿事件』みたいなジャッキー版『アウトレイジ』っぽいものも撮っちゃう事もありますけど、大半がアクションで観る人を驚かせよう、楽しませようという、純粋な映画の根源にある衝動みたいなもので埋め尽くされています。ジャッキーの凄いところはそこにあって、映画史の系譜に当てはめてみるとアクション映画、クンフー映画、そしてチャップリンやバスター・キートンからなるコメディ映画の歴史にも登場するんです。こんな人他にいます?

 凄く偉大な世界のスターだと思いませんか?

 めちゃくちゃ偉大であるにも関わらず、WiiのCMではタンクトップ一つで

「運動不足ナクシニキマシタ!」

 とか言って登場するんですよ? こんな気さくで親しみやすいスターいないですよ(実際ジャッキーのファンサービスは伝説と呼ばれる程丁寧で知られている)!

 あまりにも凄すぎて、何が凄いのか分からないようになっちゃってるのがまた凄いと僕は思います。

 最近真剣に彼の事を「凄い!」と言わないのは、多分それが当たり前になってしまっているからだと思うんですが、それでも僕は言いたいのです。ジャッキーは凄い! 素晴らしい! 彼の映画は最高だ!

 ……さて。

 ここで告白しなければならない事があります。

 実は私、『カンフーヨガ』を映画館で見逃してしまいました。

 そうです。観てないんです。

 なかなか映画の話をしないので、薄々感づいていた方もいるかも知れませんが、ご察しの通りです。観るにはDVDのレンタル化を待つしかないのです。

 言い訳のようですが、観なくても何となく分かる映画って、ジャッキー映画の特徴だと思いません?

 カンフーでヨガでインド映画ってだけで、もう何が起こるか分かるってなもので、きっとそれ以上の物はないし、しかし、それ以下でも絶対にありえないのです。ただジャッキーがインドで大暴れする、その為だけのストーリーが用意されていて、時々インド映画特有のダンスが入るという、そういういつもの仕上がりになっている事でしょう。

 でも私たちはそれが見たいんです。

「ジャッキーの映画、全部同じじゃない?」

 そういう人も多い筈です。

 でもですね、そうだよ! そこがいいんだよ!!!! 安定感! 不動!! ジャッキーにジャッキー以外を求めてどうするというんですか!

 確かにこれまで、色んなジャッキーを僕たちは観てきました。クンフー映画のジャッキー、ポリスストーリー系のジャッキー、アジアの鷹のジャッキー、ゴージャス路線のジャッキー、ハリウッドのジャッキー、アクションを止めてみたジャッキー、師匠クラスを演じるようになったジャッキー、バカ殿様に影響を与えるジャッキー……そうした幾つものジャッキーに、インド映画のジャッキーが加わっただけです。書いて何だけど、だけって事はないだろう!

 厳密に書けば、初期からこれまで、もの凄く進化してるんですよ? 考えてもみてください。人生の大半をアクション映画に捧げた人なんです。今は朝目覚めるとしばらく体を動かせない程、蓄積された怪我のダメージがある程、アクションを撮り続けた人なんです。そういう人が自作の映画を考え抜かない筈がない。

 アクション一つとってもジャッキーが考えたアイディアはたくさんあります。彼と彼のチームがアクション映画に与えた影響は計り知れません。

 パワーパウダー(イスなどを壊すと飛び散る粉のこと。使うとCG等より手軽に威力があるように見える)に香港スピン(ワイヤーを使ってキリモミ回転するあれ)! めちゃくちゃやってるようで考え抜かれたアクションの数々!!

 現在はドニー・イェンが素晴らしく、映画の感情の流れと殺陣を連動させ、よりドラマチックなアクションを撮っていますが、それもジャッキーがいての事です。

 こんなに色々書いてるけど、すいません。『カンフー・ヨガ』観てないんです(号泣)。お正月映画だ! これは観るしかない!! そう思っていたのにやってしまいました。実は『ブレードランナー2049』も『ジャスティス・リーグ』も観てないんです。どうしちゃったんだよ、オレ……。単に忙しかっただけですけど、ちょっと映画の連載してるのに痛いですよね; 風上にもっていうやつです。すいません。謝罪です。

 ただ、ジャッキーの映画の素晴らしさは私が見ようが見まいが変わりません。いつだってファンの為の映画を彼は作り続けるでしょう。だから安心して私たちは彼の映画を待ち続ける事が出来るんです。

 変わらない映画をこれからも、ジャッキーには作り続けて欲しいと願ってやみません。

 そんな訳で、
 こちらからは以上です。