第11回 スパイダーマン:ホームカミングとジョン・ウィック チャプター2


第11回 スパイダーマン:ホームカミングとジョン・ウィック チャプター2

 ドライバー求人サイト、ドラEVERをご覧の皆様こんにちは。或いは、こんばんは。
 窓辺のマーガレット、キョウキ・カンバーバッチです。

 すいませんがちょっと原稿遅れまして、2月が終わってしまいましたが、これ2月分の原稿でございます。今月は2回更新しますので、ご容赦くださいね。

 実は原稿自体、途中まで書き進めていて遅れるつもりはなかったのですが、21日、大杉漣さんの訃報を目にして、それが個人的にとてもショックが強く、それまで書いていた原稿の続きを描く事が出来なくなってしまいました。

 私の映画好きの源流となった中学・高校時代のレンタルビデオ展巡りですが、その時映画と一緒に大量のVシネマを借りたんですね。大杉漣さんはそういった作品にも多数ご出演されていて、勿論、僕の好きな北野映画の常連でもあり、TVでご活躍するようになって以降も、大好きな俳優さんの一人だったんです。

 まだまだお元気だと思い、訃報を聞く等思いもよらないことでしたので、もろに心にきてしまいました。

 そんな訳で、今こうして原稿をあらためて書き直し、向かいあっているところです。

 月に一度こうした機会をいただいているので、映画について考える事が以前より多くなったのですが、ふいに「自分はどうしてこんなに映画が好きなのか?」という問いが自然に生まれてきたんですね。それまでは好きなものは好き、というスタンスだったのですが、あらためて考えてみると割と興味深い問いでもありました。

 単純な答えみたいなものは、すぐに導き出せます。

 中学校の頃、自分は極度の人見知りと引っ込み思案で、あまり他者とのコミュニケーションがとれる状態ではありませんでした。その自分へのいらだちと、あきらめと、不甲斐なさへの慰めが映画だったんです。簡単に言えば現実逃避。それはそれは魅力的な世界でした。

 映画の主人公は自分ができない事を代わりに体験させてくれます。

 僕の青春の思い出は総ての映画の記憶と言っても過言ではないのです。

 これはとても寂しい事のようですが、それでも映画や映像作品が無かったら、自分はもっともっと酷い事になってしまっていた事でしょう。映画がそばにあって、映画と共に生きる事が出来たからこそ、今も生きていられてるんだと本気で思います。

 大人になった今感じるのは、自分を救ってくれた映画の素晴らしさ、良さを伝えたい、という恩返しみたいな気持ちが自分にはあるんだな、という事。それがなければこういう連載もしてないんじゃないかな。

 僕は映画評論家の様に、お堅い映画を観て論じる事は出来ません。世間からは「B級だね」「つまらないね」「くだらない」と言われかねないジャンル映画を心から愛しています。そういう映画を観て僕は育ったからです。

 80年代後半に登場し、大杉漣さんも数多くご出演された東映Vシネマは若い男性をターゲットにして制作されました。

 僕はその世代ドンピシャだったのです。

 Vシネマだけではありません。特定の映画。ホラーや、SF、アクション、クンフー……もしかしたら大人は目を背けてしまうかも知れない、そんな映画が僕の血潮です。

 今の時代って、例えば映画を観に行くにしてもネットで検索して「あ。この映画評価低いな」ってなる事多いですよね。でも思うんですよ。僕の少年時代、そんなものはなかった。だから自分の感覚だけが勝負で、おもしろい、おもしろくないは人それぞれだったし、誰も目を付けないような映画を密かに評価する事が自分の証明でもあったんです。

 映画のような芸術作品を評価する時、どうして他の人の意見が参考になるんだろうって、僕は不思議でたまらないんですね。

 見るまでその評価なんて、誰にもわからない筈じゃないですか。

 そのどこの誰とも分からない人の意見が自分とピッタリ符合するかなんてわからない。

 なのに「損をしたくない」みたいな自分の感性とも、ましてや芸術とも、何の関係もない尺度を持って来て測ろうとするなんて、おかしい事なんですよ。

 ただ例えば、この連載をずっと読んできてくれて、「キョウキの書く事ちょっとは参考になるよな」って思ってくれるのでしたら、そういうのはありなんだと思います。でも、どこの馬の骨とも知らない不特定多数の人が書いた、信頼できるかどうかわからない映画の評価で、実はあなたの胸に刺さる傑作であったかもしれない作品を見逃す事があったら、それは本当にもったいないと僕は思います。

 映画にはいろんな見方、楽しみ方があって、それを知ればどんな映画も大半は楽しく観る事が出来ます。

 僕が唯一映画を観ていて寝てしまった作品は水野晴郎さんの撮った『シベリア超特急』ぐらいのもので(何度挑戦しても途中で寝てしまう)、この作品は観る人にとっては最高に面白いらしく、人それぞれなんだと思います。

 何が言いたいのかと言うと、自分はこの通り、Vシネマとか、大味なアクション映画とか、そういう映画で構成されてしまっています。ホラー映画観ると笑っちゃうようなメンタルしてるし、来たるべきゾンビ襲来に備えて生きてます。

 でも、それでも良いんですよ。他者の評価なんて本当に無意味。自分が好きな作品が例えば誰も理解できなかったとしたら、黙ってればいいんです。今の世の中、自分の琴線に触れない作品は総て気に喰わない、みたいな人の発言が横行して、どれもこれもまともじゃありません。

 映画を観る時に大事なのは、自分の感性。

 それに例えば、『となりのトトロ』とかあるでしょ? あれも10代、20代、30代と観るたびに感想が変わる事から分かるように、自分の感性だってその時々で変わるんです。誰かがその時見て面白くないと感じたものなんて、何の参考にもなりません。損するとか、安パイを選びたいとか、そういう事は映画を観る前に考える事じゃないんですよ。だって大体の映画は楽しめるんですから。その楽しみ方を知れば済むだけの事。

 こういう事って実は人生にも通じていて、日々つまらないと思って生きてるより、些細な事、例えば日々の仕事であったりしても、課程を楽しめるようになれば人生面白いものだったりもするんです。

 急に何でこういう話になったのか分からないんですけど、書いてしまったんだからしょうがないですよね。

 話を少し戻しますが、僕にとって大杉漣さんはVシネマのスターなんです。これは銀幕のスターという言葉と同意です。僕の映画の根本にあるVシネマ。そこに登場する方々は全員スターです。その価値観は今後も揺るぎがない自分の一つの方針です。

 皆さんも自部の感性を信じて、好きなものを好きなだけおいかけていきましょうね!

 さて、長々と書いてしまいました。

 映画の話をしましょうね。

 最近見て面白かった映画の話なんていかがでしょう?

 『スパイダーマン:ホームカミング』を観ました。
 『スパイダーマン』はご存じ、マーベルコミックの映画化で、これまで大きくサム・ライミ監督とトビー・マグワイア主演の3部作、そして『アメイジング版』の2部作がありました。

 僕はそのうちのサム・ライミ版を愛していて、彼が初期に撮った『ダークマン』と変わらない表現で撮影された『スパイダーマン』には大きく感銘を受けたものです。単純なヒーロー物じゃないんですよね。スパイダーマンの能力を彼は最初から呪い、と言い切っていて、力を得てからも過酷な決断を迫られます。

 もっと明るく恋愛要素を、と望まれがちな大作の中で、あえてドクター・オクトパスを敵役に配置する等してハッピーエンドすらも良しとしないライミ節とでも言うべき3部作は、まぁちょっと3作目は置いておいても大好きで、きっとライミ版を超える『スパイダーマン』は今後作られないんだろうな、と思っていました。

 その思いは『アメイジング・スパイダーマン』を観て確信したんですけど、今回の『ホームカミング』は違います。

 こういう切り口があったのか!

 という新鮮なスパイダーマン像の構築に成功していました。

 まず明るい。今回のピーター・パーカー、凄く心根が明るい前向きな性格として描かれていて、悩むよりも行動が先に立つ。ヒーロー向きの性格してるんです。先の『シビルウォー』でキャプテン・アメリカと戦ったスパイダーマンは、自分の力を生かしてアベンジャーズに入隊したいと希望しているんですが、アイアンマンことトニー・スタークがそれを許可しない。

 ベンおじさんは既に亡くなっているという設定で、父親の位置にトニー・スタークが入って来るという設定も面白いです。過去にトニー・スタークを演じるロバート・ダウニーJrとウワサのあった女優さんをおばさん役に配置していたりと、そういうところも面白い。

 ピーターはヒーロー家業と高校を両立させているのですが、頭の良い彼はクイズクラブに所属しています。クイズクラブには全国大会があって決勝進出が決まるのですが、ヒーロー業もやっているため身が入らない。憧れの彼女にも誤解され、ヒーローだとも認められない彼が頑張っちゃうという、ヒーロー青春映画の決定版的な仕上がりになっています。

 すごくスパイダーマンとして新鮮な切り口で、こちらも好きになってしまいました。

 何より、最後に明かされるMJ(スパイダーマンシリーズでは、もはや伝統的な恋人の名前)! これにはやられる人も多い筈。純粋に続きが楽しみになってしまう『スパイダーマン:ホームカミング』とても良かったですよ。

 それから『ジョン・ウィック チャプター2』。キアヌ・リーブス主演、監督は『マトリックス』等でスタントのコーディネートを担当したチャド・スタエルスキと俳優のデヴィッド・リーチ。第1作は凄腕の殺し屋であるジョン・ウィックが、失意から引退したある日、車を奪われ飼い犬を殺された事からその復讐をする、というお話。

 何が凄いってアクションが凄い。

 超精密射撃。とにかく機械みたいに正確に相手の頭を撃ち抜くんです。容赦なんて微塵もない。あまりにもそれが話題になったからなのか、ナーフガンという玩具の銃のパロディCMまで作られる始末(興味のある方は『Nerf John Wick』で検索してみよう)。

 ヒットを受けて制作された『チャプター2』ですが、話はほとんど一緒です。やや前作より組織の内部的なところが見えたり、ジョン・ウィックが如何に組織の面々に愛されていたかが分かったりはあるのですが、基本的には同じで、ある殺しの依頼を受けざるを得なかったジョンに世界中の世界中の殺し屋が襲い掛かる、という中学生が考えたみたいなストーリー(褒めてます)。

 聾唖の女殺し屋や、頭を銃でぶち抜かれても死なない相撲レスラー的な殺し屋(まだ世界は日本文化を誤解してるの?)など、すぐ殺されるには惜しい方々がすぐ殺されます。最高の映画です。もうこのまま『チャプター3』も作って欲しいところです。

 考えてみたら『ビルとテッドの時間旅行』以来、ずっとキアヌも僕のスターです。『マトリックス』みたいな映画に出演されてしまっては、以降の作品が難しいかなと当初は思っていましたが、全然そんな事もなく、ジョン・ウィックのような新たな一面を見せてくれるのは凄い事だと思いますよ。

 さて次回なんですが、おそらく『ブラックパンサー』を観に行くと思うのでその感想と、マーベルが作った『ルーク・ケイジ』そしてDCコミックの『ブラックライトニング』という黒人アメコミヒーロー、マイベスト映画『ブレイド2』についても書いてみたいと思いますが、予定は予定という事で。

 そんな訳で、こちらからは以上です。