改善基準告示を守らないドライバーに罰則はあるのか?


一度でも運送会社でドライバーとして勤務した経験があれば、自動車運転者に対して適用される「改善基準告示」の内容についてご存じだと思います。
詳細な内容はわからないという人であっても、トラックドライバーに対して拘束時間や休息期間、運転時間、連続運転時間等、様々な基準が決められていることを聞いたことはあるでしょう。
その改善基準告示が改正され、2024年4月1日に以前よりもさらに厳しい新基準が施行されました。

例えば一日の拘束時間の限度は16時間から15時間に短縮され、一か月の拘束時間の限度は293時間から284時間に縮まりました。
ちなみに拘束時間とは労働時間や休憩時間、仮眠時間等の合計時間であり、出庫してから帰庫するまでの全ての時間のことです。
また休息期間一日8時間以上から9時間以上に延長されました。ちなみに休息期間とは終業から翌日の始業までの全くフリーな時間のことです。

運転時間は2日平均1日9時間以内、2週平均1週44時間以内という制限も設けられており、連続運転時間は4時間限度、途中又は直後に30分以上の運転中断時間が必要という基準もあります。
改善基準告示には特例まで含めると多数の基準が決められており、運送会社はドライバーの労務管理において必ずこの基準を守らなければならないことになっています。

但し、改善基準告示は法律ではない為、懲役や罰金等の直接的な罰則は設けられておらず、運送会社が改善基準告示に違反した場合は、運輸支局等の監査で違反を指摘され、行政処分を受けることになります。
例えば、延べ数十日間の車両停止とか3日~30日間の事業停止処分などがそれにあたります。

本来、改善基準告示は自動車運転者の安全と健康を守るためのものであり、罰則や行政処分等の有無に関わらず遵守すべきものですが、実際には行政処分防止対策の目的で管理している会社が多いと思います。
すなわち運送会社が日頃、改善基準告示の遵守を意識しているのは、同基準に違反すると厳しい行政処分を受けるからともいえます。

それではドライバーは改善基準告示を守らないことにより、何らかの罰則を受けることがあるのでしょうか。

改善基準告示自体に罰則はありませんが、実はドライバー個人が押さえておくべき重要なポイントは道路交通法の「過労運転」に関する次の条文です。
道路交通法第66条(過労運転等の禁止) 何人も過労、病気、薬物の影響その他の理由により、正常な運転ができないおそれがある状態で車両等を運転してはならない」。

過労運転の違反点数と行政処分、刑事処分は非常に厳しく、以下の内容となっています。
違反点数25点、行政処分免許取り消し(欠格期間2年)、刑事処分3年以下の懲役または50万円以下の罰金

すなわち過労運転と認定されると即免許取り消し処分を受けることになります。ところが何をもって過労運転と判断するかの明確な基準や定義があるわけではなく、トラックドライバーの場合は改善基準告示に定める基準が過労運転の実質的な認定基準になっているのです。
つまり改善基準告示に違反した状態で乗務しているドライバーは、事故を起こしていなくても過労運転と判断され、罰則を受ける可能性があるということです。

トラックドライバーは自らの安全と健康の確保以外に、過労運転の認定を防止するためにも改善基準告示の内容をしっかり把握して、遵守する必要があるのです。
万一、現在勤務中の運送会社が改善基準告示を無視した運行指示を続け、全く是正する気配が無いようでしたら、免許取り消処分を受ける前に、明日にでも退職届を提出し、法令順守の意識が高い会社へ転職することを選択すべきでしょう。