貨物自動車運送事業法等の法律改正案がドライバーに与える影響とは


皆さん、今、運送業界に関わる重要な法律改正案が国会で審議されていることをご存じでしょうか。

「2024年問題」といえば、2024年4月1日に施行する自動車運転者の時間外労働上限規制(年間960時間)と同日施行の改善基準告示改正がクローズアップされていますが、実は運送業界に大きな影響を与える別の法律改正案が2024年1月からスタートした第213回通常国会に提出されているのです。

それは2024年2月13日に閣議決定されて国会に提出された「貨物自動車運送事業法」と「流通業務総合効率化法」の法律改正案です(※3/2時点では未成立ですが、このコラムが掲載される頃には成立している可能性があります)。

この法律改正案は2023年6月に内閣府から発表された「物流革新に向けた政策パッケージ」と「同ガイドライン」の各項目を具体的に法制化するべく条文に落とし込んだものであり、法律が成立して施行されると荷主と物流関連事業者の双方に大きな影響を与える見込みです。一方でドライバーの皆さんにとっては、運送業界がより働きやすい環境になる可能性が有ります。

法律改正案の概要は以下のとおりです。

  1. 荷主(発着荷主)と物流事業者(トラック、鉄道、港湾運送、航空運送、倉庫)の双方に対し、運転者の負荷の軽減 (荷待ち時間の削減、貨物の受け渡し日時の見直し、集貨場所等への同時刻集中の防止、その他の措置) に向けて取り組むべき努力義務を課す。
  2. 取組の実施状況により国が指導、調査、公表等を行う。
  3. 一定規模以上の事業者を「特定事業者」として指定し、1.の実施に関する中長期計画の作成や毎年度の定期報告等を義務付ける。
  4. 中長期計画に基づく取組の実施状況が不十分な場合、勧告・命令を実施する。(※取組が不十分な場合は最大100万円以下の罰金)
  5. 特定事業者のうち荷主には「物流統括管理者」の選任を義務付ける。
  6. 元請事業者に対し、実運送事業者の名称等を記載した「実運送体制管理簿」の作成を義務付ける。(※「実運送体制管理簿」とは→元請が下請事業者に運送委託した場合、実際に貨物を運搬した運送会社名等の内容を運行の都度、管理簿に記載して荷主がいつでも確認できるようにすることです。運賃の低下につながる多重下請け構造を是正する目的があります)
  7. 運送契約の締結に際し、提供する役務の内容やその対価を記載した書面による交付等を義務付ける。(※これからは口頭のみでの運送委託ができなくなります。これも適正な運賃・料金の収受を進めるための法制化です)
  8. 利用運送(※下請を使う運送のこと)を適正化する努力義務を課すとともに一定規模以上の事業者には「管理規定」の作成と「責任者の選任」を義務づける。

以上が法律改正案の主な内容となります。なおその他に軽トラック事業者に対する規制の強化(管理者の選任、講習受講の義務化、国交大臣に対する事故報告の義務づけ)も改正案に盛り込まれています。

これらの法律改正案がドライバーに与える影響を考えてみましょう。そもそもドライバーの負荷の軽減が法改正の主たる目的ですから、ドライバーには長時間の荷待ち改善、手積み手卸し等の作業の見直しなど、良い影響が出るものと期待されています。荷主にも義務が課せられることにより、今後、荷役作業の見直し等が一気に進む可能性が有ります。一方、多重下請の是正が進むことによって、現在二次、三次の下請業務が中心である運送会社にとっては仕事が減る可能性もあります。

これからの数年間で物流システムが大きく変化する可能性が有り、運送業界で働くドライバーは今後の推移を注意深く見ていく必要があるでしょう。