2024年を目前にした2023年の後半以降、テレビやネット等で度々「物流の2024年問題」という言葉が使われるようになりました。 この問題には、ドライバー不足の実態や運送業の厳しい経営環境、2024年から始まる物流危機の内容などが含まれており、企業や一般社会にも広く周知されるようになりました。

2024年問題とは、
年4月から始まる自動車運転者に対する時間外労働上限規制によりトラックの稼働時間が減少し、ドライバー不足や物流の停滞など様々な社会的問題が発生すること
を包括したキーワードです。

2024年問題への対策として、政府は2022年12月以降、立て続けに施策を講じてきました。特に、

  • 2022年12月 労働基準監督署 荷主企業に対し直接、改善要請を行う
  • 2022年12月 公正取引委員会 コストの価格転嫁に後ろ向きの企業の社名を公表
  • 2023年2月 中小企業庁等 〃

などは、荷主企業に大きなインパクトを与えました。また、

  • 2023年6月 内閣府から発表された「物流革新に向けた政策パッケージ」と 取り組むべき内容を記した「ガイドライン」
  • 2023年10月 「物流革新緊急パッケージ」

などは、発荷主と着荷主に「従来の考え方を改めなければならない」という認識を持たせる効果がありました。

2023年7月には、政府が物流の効率化とドライバーの労働環境改善を図るべく、「トラックGメン」という新しい組織を作り、発荷主と着荷主および元請事業者を監視する体制をスタートしました。
これにより、荷主に対する「働きかけ」や「要請」の件数は昨年に比べ格段に増加しており、トラックGメンや厚生労働省による「働きかけ」で待機時間削減等の改善効果が実際に表れています。

半年余りの間に矢継ぎ早に打ち出された施策により、荷主の意識が大きく変化しており、ドライバーの待機時間の削減や荷役作業の負荷軽減など、物流現場の労働環境改善に向けた具体的な動きが出始めています。
例えば、積み降ろしの時刻を指定するバース予約受付システムを導入して長時間の荷待ちを削減する会社が増えてきました。
またドライバーの賃金水準改善に向けた運賃・料金の引き上げ交渉も昨年までの状況とは一変しており、交渉に応じる荷主が顕著に増加しています。

昨年までは「運送会社は他にいくらでもいる。他の会社に頼むからいいよ。」と豪語して運賃改定に応じなかった荷主が、最近は「そろそろ運賃を上げようか」と話しかけてくるような状況になりました。もちろん全ての会社ではありませんが、多くの荷主が「運送会社からもう運べないと言われたら困る」と危機感を持ち始めています。

漸く2024年問題の深刻さが伝わり始めたことと政府が打ち出してきた施策が相乗効果として荷主の危機感を高めている結果です。

しかしながら運送会社の現状を見ると、2024年問題に対する対策を講じている運送会社は未だ半数程度です。残りの半数は「始まってみないとどの程度の影響があるかわからない。様子を見てから考えよう」と悠長に構える会社もあります。

2024年問題は2024年をゴールとする問題ではなく、2024年4月から始まる問題であり、2024年以降数年のうちに勝ち残る運送会社と淘汰される運送会社がはっきり色分けされることになるでしょう。今、運送業界に興味を持っている求職者は、今から勤務しようとする会社が

  1. コンプライアンスを重視しているか
  2. 社員の労働条件や労働環境の整備に積極的に取り組んでいるか
  3. 荷主に評価されるユニークな特徴を持つ会社か
  4. 経営者は将来を見据えた経営ビジョンを持っているか

などの観点で、2024年以降に勝ち残る会社か否かを見極める必要があるでしょう。