最近は、あおり運転の摘発件数が増加し、テレビニュース等で危険なあおり運転の画像を見る機会も増えています。皆さんも過去に一度はあおり運転を受けて危険を感じたことや、反対に自分があおり運転と間違えられて不快な思いをした経験があるのではないでしょうか。
今回はあおり運転の定義や罰則、実際にあった裁判事例、運送会社への影響、自分が加害者にならない為の注意点等について書いてみたいと思います。
6年前頃からあおり運転による死亡事故等が続出したため、2020年6月30日施行の改正道路交通法により、あおり運転を含む「妨害運転」に対して罰則が厳格化されました。
まず、「妨害運転」とはどのような行為をいうのか、その定義を見ると、
- 対向車線からの接近や逆走(通行区分違反)
- 不要な急ブレーキ(急ブレーキ禁止違反)
- 車間距離を詰めて接近(車間距離不保持)
- 急な進路変更や蛇行運転(進路変更禁止違反)
- 左車線からの追い越しや無理な追い越し(追い越し違反)
- 不必要な継続したハイビーム(減光等義務違反)
- 不必要な反復したクラクション(警音器使用制限違反)
- 急な加減速や幅寄せ(安全運転義務違反)
- 高速道路等の本線車道での低速走行(最低速度違反)
- 高速道路等における駐停車(高速自動車国道等駐停車違反)
など。これらが罰則対象の妨害運転とみなされます。
なお、摘発された場合の罰則は、「交通の危険のおそれがある妨害運転」と判断されると、3年以下の懲役または50万円以下の罰金の対象になります。また違反点数が25点加算され、免許取り消し処分に処されることがあります。
さらに重大な交通事故につながる「著しい交通の危険がある妨害運転」になると、5年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象になり、違反点数35点が加算されて、欠格期間3年の運転免許取り消し処分を受けることがあります。
また自動車の通行を妨害する目的で走行中の車の前方で停止または接近する行為で負傷者を生じた場合は15年以下の懲役、死亡させた場合は1年以上の有期懲役に処されることがあります。
あおり運転厳罰化の端緒となり、社会に大きな衝撃を与えた、東名高速道路あおり運転事件は、家族4人を死傷させました。6年前のことです。
途中で裁判の差し戻し等もあり、長期間の審議の結果、一審の横浜地裁で危険運転致死傷罪を適用されて懲役18年の判決を受けました。その後東京高裁の控訴審において審議が継続していましたが、2023年12月に結審し、2024年2月に判決が出される予定となっています。
また2019年の常磐自動車道で幅寄せや割り込みを繰り返し、被害者に暴行を加えた事件では被告に懲役2年半(執行猶予4年)の判決が出ています。
加害者になると厳しい罰則が適用されますが、一方、運送会社のドライバーがあおり運転を行った場合は、会社に対しても処分が下されることがあります。
国土交通省は2020年11月から行政処分の基準を改正し、「妨害運転」を悪質違反と位置づけ、事業停止処分の対象に加えました。自社のドライバーがあおり運転を行った場合、3日間の事業停止処分の対象になりました。
また、あおり運転により重大事故を引き起こした場合は7日間の事業停止処分を受ける可能性が有ります。
このように個人も会社も甚大な影響を受けるあおり運転ですが、自分が加害者にならない為にどのような点に注意をすればよいでしょうか。
トラックは車体が大きく、車高が高いため、前方を走る車に圧迫感を与えます。相手からあおり運転と捉えられない為には、十分な車間距離をとることが重要です。焦らず、怒らず、平常心で運転することを心がけましょう。
また万一訴えられた場合に備えてドライブレコーダーを装備し、自己の正当性を証明できるようにしておくことも大切です。