オージンが記憶を取り戻すためには、ストレッチ女神の持っている神ノ手(ゴッドハンドル)の一部が必要なのだ。しかし、記憶が全て戻ってしまえば、オージンはまた運転神(ドラゴッド)たる条件を満たせなくなる危険が……!
全ての判断は、オージンを側で見守り続けるストレッチ女神に託された。どうする!?ストレッチ女神!!

――一週間前にさかのぼる。「ドラEVER様!」ストレッチ女神はドラEVERの執務室のドアをノックした。「大変です! オージンが記憶まで無くしていて…」ギィ、と音を立てて扉が開く。出てきたのは守護神ザフキエル警部だった。「ザ、ザフキエル…」「ストレッチ…。それは、我々も想定内のことよ」「え?」「剥奪された神ノ手に運転神だった頃の記憶の大半がメモリされているの。問題は今後、オージンが再び神ノ手を得た場合、記憶と一緒に『慢心』まで取り戻してしまわないか、繊細な判断が要されるわ」ザフキエル警部は、ぐっとストレッチ女神の肩を掴んだ。 「だから、アナタが遣わされているのよ」――ストレッチ女神は、その時の事を思い出し、小さくため息をついた。「ただいま…」がちゃりと部屋の扉が開いて、オージンが帰宅をする。慌ててストレッチ女神は顔を上げた。「おかえりなさいっ・・・!」けれど、オージンの様子が変だ。心なしかどんよりとしているようにも見える。もしや面接落ちたのか、と、恐々と声を掛けてみる。「オ、オージン?」が、次の瞬間、目尻に涙を浮かべて嬉しそうにオージンが叫んだ。「仕事決まったーーーーっっ!」「よかった・・・よかった!オージン!」わぁっとはしゃいだ二人だったが、オージンはふと真顔になった。 「…けどな、オレ少し怖いんだ。おっちゃんが言ってたみたいに、オレもいつか今の気持ちを忘れるんじゃないかって…。そんな気がしてな…」「オージン…!」ストレッチ女神は胸が熱くなった。思わずぎゅっとオージンの手を両手で握る。「大丈夫っ! その気持ちさえあれば大丈夫よぉ~!」「いでででででででででででで!!」感激で思わず思いっきり握ってしまった。「君は見かけによらず力が強いな!」「あはは…ゴメンちゃい」これなら、今のオージンならきっと思い出しても大丈夫。ストレッチ女神はそっと胸を撫でおろした。