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人手不足の結果、ドライバーの
仕事量がキャパオーバーになる

増加する宅配便取扱数に対して、ドライバーの数が足りない状態が続いています。これにより、ドライバー1人あたりの負担は高まっていき、ドライバーの長時間労働の原因となってきています。

仕事量自体、1人あたりが扱えるキャパを超えてきているところもあり、運送業全体で限界を迎えつつあります。ただでさえ不足している人材が、長時間労働などの負担増によって体調を崩してしまったりして、他の従業員への負担が高まるという負のスパイラル状態となってしまっています。

そして、重労働に耐えられなくなった従業員が続々と「退職する」という事態に陥ってしまうのです。退職によって、従業員数が減れば、残った従業員たちの負担がさらに強まってしまい、どんどん人材が運送業から離れていってしまいます。


ドライバーの待遇はよくない

人手不足を解消するために、新しい人材を確保するのが最優先課題です。ただ、現在の若い世代は、運送業への就職をそこまで希望していません。というのも、トラックドライバーの年収は、他の業界と比較すると全体として1~2割ほど低い傾向にあるためです。長時間労働であるにも関わらず、他の業界よりも年収が低いとなれば、なかなか就きたいと思う人は増えてきません。

ドライバーの給料を高くすれば、多少は現在の人手不足の状態は改善してくるはずです。ただ、給料を高くすれば、それだけ会社の利益は圧迫されてくるため、利益確保のために給料は上げられないという企業が多数です。介護業界などでも同様の事態となっていますが、仕事自体の利益率が低い産業だと、どうしても従業員の給料も低く抑えられてしまいます。

また、トラックドライバーは、「就職するためのハードル自体が高い」という問題点もあります。2007年の道路交通法の改正により、普通免許証で車両重量5トン以上11トン未満のトラックの運転はできなくなり、新たに中型免許の取得が義務付けられました。

加えて、大型トラックの運転には、大型免許の取得が必要です。大型免許の取得は、普通免許の取得と比べてハードルが高く、保有者が増えない要因になっています。苦労して、中型・大型免許をとってトラック運転手になっても、「年収が低い」「長時間労働」という問題がついてまわるため、割りに合わない職業となってしまっているのです。

長時間運転になると、宿泊をともなう運転も当たり前になってくるので、「きつい仕事」というイメージが定着してしまっています。


燃料費高騰による採算の悪化

ドライバーの待遇が良くならない要因として、「燃料費の高騰」も挙げられます。原油の供給量自体は安定しているのですが、産油国の政情不安定が要因で、為替変動が発生してしまうと、原油価格が一気に高騰してしまいます。トラックはガソリンがないと使いものにならないので、どんなに原油価格が高騰しても、運送業者はガソリンを購入するしかありません。

また、トラック運送業者自体が「中小企業」が多いということもあり、燃料価格の高騰分を運送料に転嫁しにくいという側面もあります。

一般乗用車のハイブリット化は進んでいますが、運送用トラックのハイブリット化は残念ながらそこまで進んでいません。電気自動車などの技術が、トラックにも利用されるようになれば、また状況は変わってくると思いますが、現状は新型トラックの開発までは手がまわっていない状態です。


政府が提示した労働時間ルールも
厳守できていない?

今後、人材の確保を進めていくためには、ドライバーの待遇を改善していかねばなりません。ただ、現状は待遇の改善どころか、より劣悪な環境でドライバーが働かざるを得ない状態になっています。

厚生労働省は、ドライバーの労働時間に関して、拘束時間や休憩時間、運転時間などの基準を「改善基準告示」として規定しています。この告示は、業界や世間の状況を考慮して、適宜改正されています。また、厚生省の「改善基準告示」に加えて、国土交通省が別途「常務時間等告示」を実施しています。この告示を遵守できない事業者に対しては、営業車両の使用停止など、行政処分を下すことになっています。

ただ、トラック運転手の長時間労働はもはや慢性的な問題となっており、厚生省、国交省のルールを裏では遵守していない業者が多くあります。ブラック企業の長時間労働の問題と同様に、表向きはルールを守っているように見せて、実はルールを守っていない、守る余裕がない状態に追い込まれているのです。

このような状態が続いてしまうと、運送業界からの退職者に歯止めがかからなくなってきます。思っている以上に、事態は深刻なのです。



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