タクシー不足を背景とする交通弱者が社会問題となりつつある中で、問題解決の一つの方法としてライドシェアが注目されています。
確かに、ライドシェアが機能すればタクシードライバーの人手不足を解消できる可能性が高まりますが、その一方で利用者から安全面などで不安の声があるのも事実です。
日本ではタクシー会社がライドシェアのサービスを提供することになりますが、どのような点に注意して運用すれば利用者に安心に利用してもらえるのでしょうか。
日本版ライドシェア普及のカギとなる安全対策と運用の要点についてご紹介します。
<目次>
ライドシェアの特徴と課題
ライドシェアとは、自家用車を用いてお客様を目的地まで送り届けるサービスのことです。
利用者はスマートフォンアプリを使ってドライバーを探すことで、目的地までの移動手段を確保します。
海外のライドシェアではプラットフォーム企業とドライバーが直接契約することが多いので、既存のタクシーよりも安く利用することができるのが大きな特徴です。
しかし、その一方で安全面に大きな課題があるのも事実です。
自動車の運行管理や車両の整備がドライバーに任されているため、不十分なケースが多く、事故につながる可能性が高くなります。
ドライバーに対する教育も不十分なため、運転技術や知識が未熟なドライバーが多く存在することも問題です。
また、万が一事故が起きた時の保証についてもドライバーが加入している保険から支払われることになるため、加入内容によっては十分な保証を受けられないケースもあります。
このような問題点を考慮して、乗客が安全に利用できるように改善されたのが日本版ライドシェアです。
日本版ライドシェアでは、サービスに参入できるのは既存のタクシー会社に限られ、運用や安全対策についてもタクシー会社の管理のもとで行われます。
ライドシェアでタクシー会社が採るべき安全対策
海外のライドシェアサービスは、タクシーよりも安い料金で提供されるため、安全面が犠牲となっているケースが目立ちます。
しかしながら、日本版ライドシェアはタクシー会社に限定されたサービスとしてタクシーと同等の料金で提供されるため、必要な安全対策についてもタクシー会社によって行わなければなりません。
安全性を確保するためにどのような対策が必要になるのでしょうか。
車両の整備・管理
タクシー会社に求められる安全対策の一つが、車両整備・管理です。
ライドシェアでは、タクシー会社の保有する車両ではなくドライバー個人が所有する自家用車を使用することになりますが、万が一事故が発生した時の責任は最終的にタクシー会社が負うことになります。
自家用車の整備や管理が不十分であれば事故につながる可能性が高くなるため、タクシー会社はライドシェアに用いられる自家用車について日常的に整備・管理しなければなりません。
事故時の補償
事故が発生した時に受けられる補償も、安全なサービスを提供するために欠かすことのできないポイントです。
自家用車に適用される保険の多くは個人での使用を前提としたものであり、商用に使用した際に発生した事故についてはカバーされないのが一般的です。
これでは乗客は十分な保証を受けられないので、利用をためらうお客様も出てきてしまうでしょう。
そこで、日本版ライドシェアでは、業務を行ううえで対人8,000万円、対物200万円以上の任意保険、もしくは共済に加入していることが求められます。
また、ドライバー自身の保険だけでは不足する可能性もあるため、タクシー会社も別途事業者向けの保険を契約する必要があるでしょう。
ドライバーに対する教育
日本版ライドシェアは、タクシーと同じ運賃が設定されているので、乗客がタクシーと同等のサービスを求めてくるのは当然のことです。
しかしながらド、ライバーの中には普段ドライバー以外の仕事をしている方もいるので、ドライバーとしての知識やスキルが不足している場合もあるでしょう。
タクシーと同じ料金を支払っているのにもかかわらず、運転が不慣れである場合や適切なルート選択ができずに移動に時間がかかってしまうのではライドシェアの成功は見込めません。
タクシー会社は、ドライバーに対して適切な教育を行い、運転技術の向上に配慮する必要があります。
また、接客技術をドライバーに教育することで、無駄なトラブルを避けることも安全対策として重要なポイントです。
ライドシェア運用におけるルール
前述の通り、日本で導入されるライドシェアには海外と異なる点がいくつかあります。
日本版ライドシェアの運用ルールには次のようなものがあります。
アプリによる予約が必要
日本版ライドシェアでは、配車アプリを使ってドライバーを手配しなければなりません。
流しの車両をライドシェアとして利用することは「白タク」とみなされてしまうので処罰の対象となってしまいます。
料金はタクシーと同等でダイナミックプライシングの適用はなし
海外のライドシェアは、タクシーよりも運賃が安く、目的地が同じ乗客が増えるほど料金が下がるダイナミックプライシングが適用されるのも魅力です。
一方、日本版ライドシェアでは運賃はタクシーと同じ水準であり、ダイナミックプライシングは適用されません。
予約時に発着地と運賃が確定し、支払いはキャッシュレスで行われるのが原則です。
まとめ
海外のライドシェアは、タクシーよりも安い運賃が適用されたことからタクシー業界との軋轢が問題となりましたが、日本版ライドシェアではタクシー会社によってタクシーと同運賃でサービスが提供されるので、タクシー会社にとってはメリットが大きいと言えます。
課題となる安全面の問題を克服して安全なサービスを根付かせることができれば、大きなビジネスチャンスとなるでしょう。