日本の運転免許取得数はおよそ8,000万人というデータがあります。
免許が取れない16歳未満の数を踏まえれば、日本人の大多数が運転免許を持っているといっていいでしょう。
とはいえ、一方で運転免許を持っていない人もいます。
そういった人のために活躍するのが、バスやタクシーなどの運転手です。
日本では、バスやタクシーを運転するためには二種免許が必要ですが、実は最近、この二種免許の取得緩和が行われました。
二種免許とは?
まずは、二種免許の概略について解説していきましょう。
私たちが仮に自分の持っている車を運転したいと思う場合は、普通第一種免許を取らなくてはいけません。
これに対して、タクシーなどでお金を取ったうえで他人を乗せる時は、普通第二種免許を取る必要があります。
このように、二種免許は営利目的で他人を車に乗せるにあたっては欠かせない免許なのです。
二種免許は、第一種免許と同様、普通、中型、大型、大型特殊、牽引の5種類の免許があります。
たくさんあって頭が混乱してきそうですが、牽引免許を除けば後になればなるほど大きな車を扱えるようになると考えておけば間違いはありません。
たとえば、バスの運転手になるためにも二種免許が必要ですが、この場合は普通や中型ではなく、大型免許を取る必要があります。
二種免許を持っていると乗れる車は、バスやタクシーのほかにハイヤーや介護送迎者などが挙げられます。
かつては厳しかった第二種免許の取得条件
普通第一種免許を取得する場合の条件は18歳以上で、運転技能試験や学科試験などに合格しなければいけません。
それに対して、普通第二種免許の場合はこれまで満21歳以上で、車の運転の経験が3年間なければ取得できませんでした。
先ほども述べた通り、普通第二種免許を持っていると営利目的で他人を車に乗せることができます。
とはいえ、そこには責任も伴います。
仮にタクシーの運転手が20歳に満たず、さらに運転経験も浅いとなったら、事故の確率が高くなってしまうでしょう。
若くてさらに運転技能が未熟な人にタクシーなどを扱わせないようにこうした取得条件を設けていたのです。
緩和後の二種免許取得条件
しかしながら、こうした取得条件は2022年5月に緩和されました。
これまで満21歳だった年齢制限は満19歳にまで引き下げられ、さらに運転経験も3年から1年に引き下げられたのです。
大幅な緩和と言えますが、一方で追加された条件もあります。
2022年以降、満22歳未満、そして3年未満の運転経験の取得希望者は、受験資格特例教習を受けなければいけなくなりました。
これまでも第二種免許を取得するには技能実習が必要でしたが、それに加えて特別な講習を受けなければいけなくなったのです。
いずれにせよ、こうした緩和によって、高校を卒業したばかりのドライバーがタクシー運転手になることも可能となったと言えるでしょう。
なぜ二種免許の取得条件は緩和された?
今回の取得条件緩和は画期的とも言える出来事です。
なぜかといえば、他人を乗せてバスやタクシーを運転するという責任あるドライバーになるための条件を緩和したからです。
特例講習という新たな条件を加えたとはいえ、危険とも言える決定でしょう。
では、なぜ二種免許取得は緩和されたのでしょうか。
まず大前提として押さえておくべき事実として、日本は少子高齢化が続いています。
そのうえ、これまでバスやタクシーの運転手を担っていた現役世代が次々と退職していく一方で、次なる担い手がなかなか現れずバス業界やタクシー業界は人手不足にあえいでいます。
これをそのまま放置していたら、バスの運転手はいなくなり、車に乗れない人などが困ってしまうことは必須です。
こんな状況下で、二種免許の取得条件をかつてのように厳しい条件にしたままでいれば、どんどん運転手はいなくなってしまうでしょう。
そのため、少しでもドライバーのなり手を増やすために取得条件の緩和に至ったのです。
高卒就職を増やすにあたっても有効な条件緩和
また、二種免許の取得条件を満19歳に引き下げるのは、日本の就職条件を踏まえても合理的な決定です。
たとえば、高校を卒業してバス会社に就職した人がいるとしましょう。
彼は卒業時点で免許を取得しており、あと1年運転経験があれば二種免許を取得することができます。
そこで、バス会社は彼を1年間社員として教育しつつ、運転経験を積んで二種免許取得に備えさせることができるのです。
効率良く社員育成を行って、即戦力を増やしやすくするという意味でも、今回の取得緩和は人手不足解消にうってつけの方策なのです。
まとめ
人手不足はバス業界やタクシー業界に限らず深刻です。
そのうえ、企業努力で人手不足を解消するには限界があります。
今回取り上げた二種免許取得の条件緩和のように、法律面からアプローチすれば問題を解消できる可能性は十分にあるでしょう。