プライオリティの判断が社長の仕事 ①

シルバーシートかそれともプライオリティシートか


前回に書いた事業者の経営委員会は、オーナー会長、社長、全取締役の他、社外からは顧問弁護士と長期契約しているコンサルタント、取引先の元支店長、金融機関から1人、それに私の5人が加わって構成した。

シルバーシートに座ることに対する負い目が、年齢と共に薄れてくるから不思議だ。そのような心理こそが、老いの証拠なのかもしれない。

だが現在は、厳密にいうと電車の中にシルバーシートというものはない。優先席(座席)、専用席、おもいやりゾーン(ぞーん)など鉄道会社によって様ざまだが、高齢者だけではなく、怪我をしている人、妊婦や乳幼児をつれた人、体に障害をもつ人など、何らかのハンディキャップをもつ人が優先して座れるようにと設置された座席である。

このような座席を最初に導入したのは都営地下鉄(東京都交通局)だったようだ。1970年ごろといわれている。その後、1973年に当時の国鉄が東京の中央線の快速電車と特別快速電車で、9月15日の敬老の日から設置し、それ以降に国鉄各線や大手私鉄などでも導入するようになったという。最初のころは一目で識別できるように座席の色をシルバーにしていたので、シルバー(高齢者)シートと呼ばれていたが、その後、優先席などに名称が変更されるようになった。

このようなことから、現在ではプライオリティシートと呼ばれる。プライオリティ(優先)となると話は別で、高齢者であっても健康で肉体的なハンディのない人は座るべきではない、という気になってくる。

ところで、プライオリティすなわち優先権の的確な判断力が、今こそ経営者に求められている。経営課題の優先順位を的確に判断できる能力である。

現在は市場が縮小している。少子高齢化など日本の人口構造からみても、ほとんどの分野で国内市場は今後さらに縮小していく。同時に、需要の構造が変化してくる。消費需要の中に占める高齢者の割合が高まるにつれて、需要の中身が変わってくるからである。高齢者を対象とした市場や環境関連産業などは需要の拡大が見込まれるが、それ以外の市場はシュリンクすると予測できる。

したがって、従来と同じような経営をしていては売上の減少は避けられない。また、需要の質的な変化に対応できなければ、事業は衰退してしまう。このような中で経営上の優先順位が何かを的確に判断する能力が経営者にはますます必要になってくる。

ところで、経営環境が厳しくなる度に、どの企業でも経費削減を大きな課題として掲げる。これまでも経費削減は重要であったし、今後も同様であろう。

もちろん、経費削減自体が悪いわけではない。ムダな経費は削減すべきだ。経営環境には関わりなく、ムダな経費を削減するために努力するのは当たり前のことである。このようにムダな経費の削減は、企業経営にとってはいわば永遠の課題なのだが、とりわけ経営環境が厳しくなればなるほど、各企業にとって経費削減への取り組みは重要になってくる。

ところが同じ経費削減の取り組みを見ても、取材をしていると企業間で大きな違いがあることが分かってくる。どの企業でも同様に行っている経費削減なのだが、その取り組み方に企業のレベルの差といったことが現れてしまう。

たとえば、何%の経費削減という方針が出されると、削減目標に沿って、総ての経費を同じように一律に削減する企業がある。一方、削減の目標値は同じであっても、支出項目ごとに精査し、項目によっては一気に経費をゼロにするし、逆に支出を以前より増やす項目もあるなど、全体として削減目標を達成するという企業がある。このように同じ目標を掲げても、目標達成にむけた取り組みにメリハリのある企業とない企業があるのだ。

どちらの方が、企業のレベルが上かは明らかであろう。もちろん支出項目ごとに削減幅(増加もある)が異なる企業の方が優れている。

それは何のための経費削減かという最も基本的な点を理解しているかどうか、という認識の差である。