自動車の運転中、目の前のタクシーが急に減速したり停車したり、或いは車線を変更してきたりといった状況に遭遇した事はありませんか?

プロドライバーによる危険な運転にヒヤッとしたり苛ついたりする事もあると思いますが、何故あのような動きになるのか、実は様々な理由があります。

今回はそれを現役タクシードライバーである私たくのり管理人がご説明します。


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空車時の危険な車線変更

これは都心部などの流し営業が成り立つエリアのみで見られる光景ですが、前方のタクシーがお客さんの乗車していない空車状態である場合、基本的にはお客さんを探して左前方を意識しながら走行しています。

そんな流し営業の場合、一般的には一番左側の車線を走行しますが、路上駐車や流れの悪い箇所では右側車線に移っている事もあります。
その際、お客さんを前方に発見した場合、安全確認を怠って慌てて左側車線に移ってくるケースがあります。
もちろんこれは非常に危険な行為ですが、特に売り上げが悪い日は運転手も必死になっている事があり、安全確認よりも先にお客さんを確保する事に意識が行ってしまっている事が考えられます。

プロドライバーらしからぬ危険な運転ですが、一部このような運転をするドライバーがいる事も事実です。

また、反対車線にお客さんを発見した空車タクシーが、急にUターンを行う事も稀にあります。
同じく超危険行為ですが、前述の通り意識がお客さん探しに完全に偏っており、危険な運転だと気付くよりも先に動いてしまっている為に起こる事です。

実車時のノロノロ走行

プロ・アマ問わず自動車の走行中は運転に集中しなければなりませんが、お客さんの乗車中は全神経を運転だけに回すわけにも行きません。

お客さんの中には当然タクシーに乗り慣れていない方もいます。また、記憶が曖昧な場所、初めての場所に行くことも多々あります。

指定された付近までは到着したものの、お客さんが目的の建物をキョロキョロ探してたり、記憶を頼りに向かっている場合、「ゆっくり走って」との指示が出る事も多いです。
運転手側も通り過ぎるわけにはいかないとの思いでスピードを落とすのですが、その際に後続車がいた場合は迷惑をかけてしまいます。
後続車がいる場合は一旦停車させてやり過すのがセオリーですが、それに気付いていないタクシーが邪魔なノロノロ運転になってしまいます。

実車中の急な右左折

実車走行中のタクシーがウィンカーも出さずに、或いは曲がると同時にウィンカーを出すような急な右左折を行う場面に遭遇した事があるかも知れません。

これの多くはお客さんからの急な指示です。
目的地への最終的な微調整でお客さんから指示を頂く事も多いのですが、その際に急に言われる事が結構な頻度であります。

お客さん「あ!ここ曲がって!」

運転手「ええ!?右ですか?左ですか?」

お客さん「み!右!右右!」

このようなやりとり。

極力安い運賃で到着しないとトラブルになりかけないので、曲がる箇所を通り過ぎるわけには行かないと運転手は考えます。
そこに急な指示出しをされると、急ハンドルで曲がる事になります。
後続車は当然驚きますし、間違いなく危険な運転ですが、一応タクシー側ではそのような事情があります。

また一方で、お客さんの急な指示出しが無いのにも関わらず急ハンドルで曲がる事もあります。
これは漫然運転中の運転手が、曲がる箇所に寸前で気付いて行うパターン。
こちらは集中力を欠いた漫然運転のケースであり、言い訳も出来ない完全な運転手の過失です。

急加速、急減速を多用する実車タクシー

実車走行中、やけに急加速急減速を多用するタクシーがたまにいます。
お客さんはさぞや怖い思いをしているだろうなと思うかもしれませんが、この場合の多くはお客さんによる「飛ばせ!」といった指示によるもの。
自動車の運転は人の命にかかわる事なので、お客さんとは言え安全運転に口を出して欲しくないのが本音なのですが、実際は「とにかく急いでいるから飛ばしてくれ!」「黄色信号で止まってんじゃねーよ!(実際はほぼ赤)」などと言った急いでいるお客さんによる圧力や暴言は横行しています。
運転手はそれでも危険運転はしたくないので、急加速急減速を多用して”急いでいるアピール”をしている事が多いのですが、傍から見たら乱暴な運転をしているタクシーに見えると思います。

また、そういったお客さんが多いので、予めクレームを回避する為に急加速急減速を常時行ってしまう運転手も中にはいます。
そういう運転が染みついている状態。
これに関しては如何なものかと思いますが、同じ運転手として気持ちは分からないでも無いです。
お客さんから「特に急いでいませんので」という一言を最初に貰えると、涙が出るくらい感謝するのが我々運転手です。

ハザードランプを出しているのに中々停車しない

前方の実車タクシーが、ハザードランプを出したので停車するのかと思いきや、しばらくそのまま走行し続けるという場面に遭遇した事はありますか?
後続車にとっては停車するのかしないのか分からずイライラする要因になります。

これは車内では「ここで停めて」との指示を受けてハザードランプで後続車に停車する旨を伝えたあとにも関わらず、「もうちょっともうちょっと!もっと!」などとさらに進んでくれとの指示があるケースです。
特に普段自動車の運転をしないタイプのお客さんに多いのですが、こちらも止まるに止まれないのでズルズルと走る事になります。

後続車が気にはなるものの、運転手は停車位置にこだわっているお客さんが多い事も経験上知っているので、これもトラブル回避でそのまま進んでしまいます。

最後に

公道を利用して営業している事業ですので、道路交通法、及び道路運送法を遵守するのは大前提なのですが、同時に接客業でもあるので、お客さんの要望に応えたいという思いもあります。
理想は安全運転の為に行う行動に関してはお客さんも口を出せない風潮になる事ですが、現実は大幅にかけ離れています。
特にお客さん第一主義の日本では顕著のようです。

危険な運転は当然あってはならない事で、それがタクシー運転手によるエゴならば言語道断です。
しかし危険だとしてもお客さんの指示になるべく忠実に従わないとトラブルになるのが現在の状態。
妙な動きをするタクシーに遭遇した場合、車内でお客さんによる何かしらの無茶振りが行われている場合も往々にして考えられるのです。

出典:たくのり

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