ネット通販利用者の増加に伴い、運送業界においてドライバーの人手不足が大きな問題となっています。
現状においてどのくらいドライバーが人手が不足しているのか、また人手不足の原因は何なのかを探り、その解決策や今後の見通しなどについて解説します。


コロナ禍が拍車をかけるネット通販業界

百貨店などの実店舗の売上が伸び悩む中で、それに反比例するかのように順調な成長を遂げてきたのがネット通販業界です。
実店舗に比べて価格が安いということや買いに出かける手間が省けるということ、近くでは買えない珍しい商品も簡単に買うことができるなど、利用者にとって大変メリットが多く、若い人を中心にネット通販利用者が増加傾向にあったところにコロナ禍が拍車をかけ、運送業界が悲鳴をあげるほどの状態になっています。
ネット通販利用者が増加して運送業界が活気づくことは、本来であれば売上増につながって喜ばしいことなのですが、現状はどうもそうではないようです。
というのも、あまりにも急激に業務が増加したために、それに追い付けない状況となってしまっているからです。
この背景には、ドライバーの人手不足が挙げられます。
荷物を運送する肝心のドライバーが不足すれば、業務が滞ってしまうのは当然のことです。

運送業界のドライバー不足の現状

では、実際にどのくらいどのくらい不足しているのか、その人手不足の要因を見ていきましょう。

数字で見る人手不足の状況

では、実際どのくらいのドライバーが不足しているのでしょうか。
厚生労働省の調査では、運輸業・郵便業では60%近く不足となっており、平均よりも20%近くも高い数値となっています。
労働経済動向調査の概況
また、全日本トラック協会の企業調査でも、7割近くの会社が人手不足を感じていることがわかります。
求人倍率を見ても、この現状が反映されていることがわかるでしょう。
2019年10月の有効求人倍率は、全体で1.57倍でしたが、運送業に関しては3.5倍にもなっているのです。

人手不足の原因

なぜ、運送業界においてドライバー不足が深刻化しているのでしょうか。
その原因を一言で言うと、業務の増加により労働環境が悪化しているからです。
待遇は決して悪くはないのですが、それを上回る過酷な労働環境が働き手を遠ざけてしまう原因となっているようです。
現状はそれほど過酷ではない場合でも、悪いイメージが先行してしまっています。
労働環境が過酷となってしまった直接的な原因は、最初でも触れたネット通販利用者の急激な増加があるのですが、もともとの構造的な問題もあるようです。
たとえば、運送効率があまり良くないということが挙げられます。
まず、本来であればもっと多くの荷物を積み込むことができるのに、積載可能な量よりも大幅に少ない量しか積み込めません。
これは配送する荷物の大きさが一定ではないために隙間なく積むことができないことや仮にギリギリまで積み込むことができたとしても、今度は荷物が降ろしにくくなってしまうことなどが原因にあります。
それとともに、受取人が不在のために再配達をしなければならないことも、運送効率の悪さの大きな要因です。
2つ目に、ドライバーの高齢化の問題が挙げられます。
若い人たちの車離れはしばしば耳にすることですが、普通乗用車でさえ敬遠されるようになっていることを考えれば、大型トラックを運転することも多い運送業のドライバーのなり手がいないのも頷けます。
若い人たちにとってあまり魅力的な業界ではないということです。
このように過酷な労働環境と若者のなり手不足などにより、業務の増加に反比例してドライバーの人手不足が続いているのです。

解決法と今後の見通し

今後も、ネット通販利用者は増加する、あるいは高止まりすることが考えられますが、運送業のドライバー不足問題は解消されるのでしょうか。
もちろん、業界も手をこまねいているわけではありません。
たとえば、再配達にならないように配達希望時間を受取人が指定できるようにメールで通知したり、休日の配達を中止したりするなどの取り組みが始まっています。
配達希望時間の指定に関しては受け取る側にとってもメリットがあり、もっと早くから導入しても良かったと思わされるものです。
メールやLINEでのやり取りができない方も少なくありませんが、運送効率の改善には大きく貢献しているようです。
また、女性が進出しにくいイメージがあるため、国が主導して、「トラガール促進プロジェクト」という大型免許などを資格するためのサポートも実施しています。
今後、より一層働きやすい魅力的な環境づくりが行われていくでしょう。

まとめ

ネット通販利用者増加に伴い、運送業界の労働環境が悪化し、ドライバーの人手不足が問題となっています。
今後もこの傾向は続くことが予想されており、労働環境の改善が急務となっているのです。
また、国も女性が働きやすい環境づくりを実施しており、問題の解決に取り組んでいます。