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運送業にてドライバー不足が深刻化
現在、運送業では人手不足が深刻になっています。ただ、厳密に言うと、「働き手が減っている」という訳ではありません。運送業に従事する就業者数は、増減を繰り返しつつも、おおむね180万人前後を推移しています。ではなぜ人手不足が叫ばれているのか。それは、就業者1人あたりの仕事量が増えてきているためです。
運送業で1人あたりの仕事量が増えている原因は、
- Amazonや楽天などのEコマース市場の成長に伴う宅配物の増加
- トラックの積載効率の悪さ
- 荷待ち、ラストマイルといった時間のロス
などの要因が考えられます。
それぞれ詳細を確認していきましょう。
Amazonや楽天などのEコマース市場の成長に伴う宅配物の増加
日本をはじめとして、世界各国でEコマース市場が急拡大しています。日本では、Amazonや楽天といったEコマース事業者の成長にともなって、利用者も増えてきています。Eコマース市場が拡大すること自体は、経済全体から見れば悪いことではありません。それだけ、人々の購買欲を掻き立てることになるので、モノを売る企業にとってはとても良い話です。ただ、個人がEコマース市場で購入することによって、運送業者が個人の家へ届ける荷物の量は必然的に増えてきます。
1世帯あたりに届ける荷物量が倍になれば、運送業者の仕事も単純に倍になってきます。本来は、仕事量が増えたら従業員数を増やす必要があるのですが、あまりにも急激にEコマース市場が拡大しているために、人材の補充が追い付いていないのが現状です。
一部の運送業者では運送料の値上げに踏み切りましたが、それでもEコマースの利用者は減ることなく、増加を続けています。
トラックの積載効率の悪さ
国土交通省の発表によると、トラック1台あたり積載効率は40%ほどとなっています。積載効率とは、トラックの最大積載量から実際の輸送量を割った数のことで、どれだけ効率的に荷物を積めているかを示します。この数字は、横ばいの状態を続けており、トラックの荷室の半分以上をからのままにして走行していることになります。
もっと、1つのトラックに目いっぱい荷物を積めば、より効率的に輸送ができるのですが、現状はトラックに余裕を持たせて走らせているのです。
これは、国の問題というよりは、実際の運送業者側の問題であると言えます。ただ、時間や配達時間などを考慮すると、トラックに荷物を限界まで積む余裕がないとも考えられます。このトラックの積載効率の悪さは、以前から指摘を受けている部分でもあり、今後改善していくことが求められます。
荷待ち、ラストマイルといった
時間のロス
運送業界では、「荷待ち」と呼ばれる荷物を受け取る、もしくは納品するための待ち時間が存在します。この「荷待ち」の時間が長期化している傾向にあり、運送業者の長時間労働に繋がっています。また、配送センターから個人宅(ラストマイル)間の往復が、再配達によって何度も生じてしまう問題なども、時間ロスの原因として深刻になっています。
再配達のサービスは、利用者側からすると非常に便利なサービスなのですが、配送業者側からすると、難度も再配達を受けてしまうと、時間をむだに使ってしまうことになってしまいます。現在、多くの運送業者では、再配達は「無料」となっています。再配達を有料化するなど、制度自体の見直しが今後必要になってくると言えます。
今後は少子高齢化で
人手不足が深刻化する
現在の運送業の人手不足は、主に業務量の増加によるものですが、今後は「少子高齢化」による人材の不足が危惧されています。現在、運送業に従事する人たちの年齢層「40代~50代」が多いとされています。他の業界に比べて、年齢層が高い傾向にあり、今後、この年代の人たちが高齢化してくると、仕事を継続できる人が徐々に少なくなっていくことが予想されます。もちろん、高齢になっても現役で働ける人も増えてくるとは思いますが、従業員の高齢化はもはや避けては通れない状態となっています。
また、近年は高齢ドライバーによる事故が多発しています。今のところは、運転免許の更新に年齢制限は設けられていませんが、今後規制が強化される可能性は十分あります。ドライバーの年齢が制限されてしまうと、高齢化が進んでいる運送業界は回らなくなってしまいます。