この記事の要約

ドライバーの労働環境を改善する新しい法律が成立しました!

2024年4月26日に、トラックドライバーの働き方を改善するための法律が決まりました。
主な内容は次の通りです。

  • 1.荷物を送る人と運ぶ会社に、ドライバーの負担を減らすように努力することを求める
  • 2.国がこの努力の状況をチェックし、結果を公表する
  • 3.大きな会社にはドライバーの負担を減らす計画を作り、毎年報告することを義務付け
  • 4.取り組みが不十分な場合には、罰金が科されることがある
  • 5.荷物を送る大きな会社には、物流を管理する人を置くことを義務付ける
  • 6.元請けの会社には、実際に荷物を運んだ会社名を記録しておくことを義務付ける
  • 7.運送契約の内容や料金を書いた書類を作ることを義務付ける
  • 8.下請け運送のルールを作り、責任者を決めることを義務付ける

この法律により、ドライバーの働き方が改善され、給料も上がることが期待されます。


「貨物自動車運送事業法」と「流通業務総合効率化法」の法律改正案が衆参両院の審議を経て2024年4月26日に可決成立しました。
皆さんご存じのとおり、現在、国会では裏金問題や政治資金規正法改正案など衆議院解散をも視野に入れた不穏な情勢が続いており、今国会中に本当に法案が成立できるのか不安でしたが、無事に可決成立しました。



この法律は本コラム第28号でも取り上げたとおり、今後の物流業界の変革に向けて非常に重要な意味を持っています。そして何よりもトラックドライバーの労働条件の改善に向けて大きな効果が期待されています。

改めて法律改正案の主なポイントを挙げると以下のとおりです。

  • ①荷主(発・着荷主)と物流事業者の双方に対し、運転者の負荷の軽減(荷待ち時間の削減、その他の措置)に向けて取り組むべき努力義務を課した。

  • ②取組の実施状況により国が指導、調査、公表等を行うことにした。

  • ③一定規模以上の事業者を「特定事業者」として指定し、①の実施に関する中長期計画の作成や毎年度の定期報告等を義務付けた。

  • ④計画に基づく取組の実施状況が不十分な場合には勧告・命令を実施し、取組が不十分な場合は最大100万円以下の罰金を科すことにした。

  • ⑤特定事業者のうち荷主には「物流統括管理者」の選任を義務付けた。

  • ⑥元請事業者に対し、実運送事業者の名称等を記載した「実運送体制管理簿」の作成を義務付けることにした。「実運送体制管理簿」とは元請が下請事業者に運送委託した場合、実際に貨物を運搬した運送会社名等の内容を運行の都度、管理簿に記載して荷主がいつでも確認できるようにするもので、運賃の低下につながる多重下請け構造を是正する目的があります。

  • ⑦運送契約の締結に際し、役務の内容やその対価を記載した書面による交付等を義務付けた。これは適正な運賃・料金の収受を進める目的があります。

  • ⑧下請を使う利用運送の適正化に努力義務を課すとともに一定規模以上の事業者には「管理規定」の作成と「責任者の選任」を義務づけた。

  • 以上が法律の主な内容です。この法律は来年以降の施行になる予定ですが、今年度中に具体的な取組内容に関する通達が発出される予定です。
    また法律が成立した際に、衆参両院で各17項目にわたる附帯決議が採択されました。


    附帯決議とは法的効力はありませんが、法律の執行に際して国会が政府に注文を付ける内容で政治的効果があり、行政の施策にも影響を与えます。


    附帯決議の中には、

  • ①早期に時間外労働上限を年720時間に移行できるよう強力に推進
  • ②運賃収受と荷待ち時間短縮の状況調査と公表
  • ③トラックドライバーの賃金水準の引き上げに悪質な荷主の監視強化
  • ④必要な措置を講じること

  • 附帯決議が17項目も付されることは異例であり、今回の法的な裏付けをもとにドライバーの労働環境は比較的早期に改善される可能性があります。


    この法律が強い監視体制の下で厳格に実行されると、ドライバーを劣悪な条件で雇用する運送会社は必然的に淘汰されていき、優越的な立場で無理な取引条件を強いてきた一部の荷主は運送業務を委託できる運送会社がいなくなり、経営の継続が困難になることでしょう。


    現在、すでに運賃水準の是正が各地で進みつつあり、ドライバーの給与水準の改善にもつながりつつあります。 この動きが定着し、ドライバーの労働環境が改善されて運送業界に若いドライバーが増えてくることを期待したいと思います。