ドローン配達の起源と現状
今でこそ一般的に知られるようになったドローンですが、第二次大戦中にドローンが開発された当初は軍事用として開発されました。その後も偵察用など、主に軍事関連での活用が想定されていました。産業用としての有用性が認識され、実証実験が進みだしたのは最近10年間ほどのことです。
産業用ドローンの用途は幅広く、農薬散布や災害時の捜索や救出活動への利用など様々な利用方法がありますが、中でも物流分野での「ドローン配達」については日本国内だけでなく、世界各地で実証実験が進んでいます。
ドローン配達の実証実験
最初に本格的なドローン配達を提案し、実証実験を始めた事例としては2013年のアマゾンの取組が知られています。アマゾンはドローンを使ったプライムエアという商品配送サービスを開発し、アメリカやイギリス等で実証実験を行いました。その後、ウーバーがウーバーエアという同様のサービスを開発し、実証実験を行っています。またグーグルは子会社のウィングが実証実験を行っており、大手ドローン製造会社のDJIは様々な分野で実証実験を繰り返しています。
日本国内においても各地の自治体が「国家戦略特区」の一つである「ドローン特区」に名乗りを挙げ、実証実験を行っています。例えば宮城県仙台市や秋田県仙北市、千葉県千葉市徳島県那賀町などは積極的にドローンを活用した産業活動の実証実験を行っており、その他首都圏、中京圏、関西圏など各地の自治体で取組が進んでいます。
日本にはドローン関連企業や先進的な技術開発を行う優れた研究機関が存在し、戦略的に実証実験を進めていることから、ドローン配達の将来性はかなり高いと見込まれています。また都市部の交通渋滞や人手不足、高齢化、地震等の災害など日本が現在抱える課題の解決の為にもドローンの活用に対する期待が高まっているのです。
ドローン配達の課題
次世代の商品配送サービスとして期待が高まるドローンですが、安全性の確保やプライバシーの保護、交通法規への対応、航空管制との連携など解決すべき課題が多く残されています。また最近ではロシアのウクライナ侵攻においてドローンによる爆撃が行われ、テロに利用されるリスクも高まるなど、防衛・安全面から規制緩和をどこまで進めるべきかを問われる状況になっています。
今後、配達用ドローンの性能が向上して、航続距離がさらに伸び、墜落や衝突を回避するシステムが確立して飛行の安全性が高まってきたときに実用化に向けた規制緩和の可能性が高まると思います。将来、法的・技術的制約が解決された時に、本格的にドローン配達が拡大発展することになるでしょう。
ドローン配達の将来
それでは現在の課題が解決された時、ドローン配達は将来どのように発展していくのでしょうか。現在の段階では主に都市部や近距離の小荷物の配送に焦点をあてていますが、将来的には農村部や過疎地区など広範囲の配送をカバーするようになり、小口・軽量の荷物だけでなく、家具や建材、機械類など大きい荷物を配送できるようになるでしょう。
また航空交通管理やドローン間など各種通信ネットワークの連携により自動制御が進むと、より安全で効率的な物流システムが構築される可能性があります。
運送業への影響
それではドローン配達の進展は将来運送業にどのような影響を与えるでしょうか。まず車両とドライバーを抱えて配送業務を行う場合に比べ、コストが大きく削減されるでしょう。また交通渋滞がなくなることで配送時間が一定かつ短縮される効果をもたらすでしょう。一部の配送分野では配送ドライバーが不要になり、人材確保の問題が解消される可能性もあります。