令和元年11月1日から改正が施行されます

規制の適性化やトラック運送事業者が遵守すべき事項の明確化を目的したトラック運送事業の関係法令及び通達についての一部改正が施行されます。今回の改正では、トラック運送事業の健全な発達やトラックドライバーの労働条件の改善が主な目的となっており、トラック運送事業者への規制が強化となる改正内容となっております。11月1日に施行される改正内容は大きく分けると「規制の適正化」と「事業者が遵守すべき事項の明確化」の2つに分かれますが、その中でも、今後のトラック運送事業の運営に大きな影響を及ぼすであろう改正内容についてこのページでは解説していきます。 ※令和元年9月12日に公表されている情報で本記事を執筆しております。

改正事項.1欠格期間の延長と欠格事由の追加

今回の改正では、欠格期間が2年から5年に延長されるとともに、欠格事由の追加が行われます。親会社・グループ会社・子会社など許可を受けようとする事業者の議決権の過半数を所有している密接関係者が、事業許可の取消処分を受けたり、行政処分逃れのために自主廃業を行った場合、許可を受けようとする事業者は5年間、事業許可を取得できないことになります。

欠格事由とは?

要求されている資格を欠くことを言います。個人事業主の方はその本人が、法人の場合はその役員(取締役・監査役)が欠格事由に該当していると、トラック運送事業の許可を取得することができません(貨物自動車運送事業法第5条)

改正事項.2事業許可取得の際の審査基準の変更

11月1日の改正では、新規許可申請時の審査基準が厳しくなります。申請日前の行政処分の有無を確認する期間が、改正前の期間の2倍程度に延長されるとともに、新規許可申請時の資金計画として計上する費用のうち、下記のものについては、計上する期間が延長されます。

改正事項.3事業計画変更の際の審査基準の変更

営業所の新設や車庫の拡張、一定規模以上の増車を行おうとする場合など、事業規模拡大となる事業計画変更時の審査基準も厳しくなります。事業計画変更の際は、トラック運送事業者の法令遵守状況についての次の審査基準が追加となります。

  1. 申請に係る営業所において、申請日前一定の期間又は申請日以降、認可までの間に、貨物自動車運送適正化事業実施機関による巡回指導結果がE(大変悪い)でないこと。
  2. 申請に係る営業所において、申請日前3か月又は申請日以降、認可までの間に自らの責による重大事故を発生させていないこと。
  3. 特別の事情がある場合を除き、申請に係る営業所を管轄する運輸支局管内における申請者が保有する全ての事業用自動車が、車検切れになっていないこと。
  4. 貨物自動車運送事業法第60条を根拠とする報告や、事業報告書・事業実績報告書・運賃料金の届出について、報告届出義務違反がないこと。
  5. 省令で定める特別の事情がある場合を除き、運送に対する対価としての運賃と役務に対する対価としての料金とを区別して収受することについて明確に規定されている約款を使用していること。

さいごに

本記事で解説している改正は、11月1日以降に申請書類が受理となる申請から適用されます。従って、11月1日以前に運輸局・運輸支局で審査中の申請や、10月31日までに受理となった申請は、法改正前の審査基準にて審査が行われることになります。今回ご紹介した改正情報以外にも、11月1日から始まる新制度では、細かな審査基準の変更があります。たとえば、営業所・車庫・休憩施設が賃貸物件の場合は、改正前では契約期間は概ね「1年」とされていたものが、改正後は「2年」に変更になるといった改正も含まれております。新制度が始まると、申請書類の様式も変更になることが予想されますが、本原稿を執筆している令和元年9月12日時点では、各地方運輸局長が申請の処理方針を定める公示が公表されていないため、細かい変更内容までお伝えすることができない状況です。最新の法改正情報は、地方運輸局やトラック協会から発信される情報をご確認頂くか、私が所属している一般社団法人運輸安全総研トラバスや行政書士法人シグマのホームページでも随時発信しております。

著者情報

阪本 浩毅(さかもと ひろき)

一般社団法人運輸安全総研トラバス代表理事・行政書士法人シグマ代表

阪本 浩毅

大学を卒業後、大手旅行会社に就職。修学旅行などの教育旅行の企画・営業に従事。旅行会社在職中にコンプライアンスの重要性に気づき、法律家を目指すために退職。退職後は、都内の司法書士法人・行政書士法人にて、企業法務に従事する。行政書士開業後、個人事務所時代から一貫して、運輸業と観光業専門の行政書士として、数多くの一般貨物自動車運送事業・貨物利用運送事業・倉庫業・一般貸切旅客自動車運送事業などの運輸業に関する許認可法務に関与してきた経験を持つ。現在も行政書士法人シグマの代表として、運輸業と観光業の許認可の専門家として活動している。