トラック運送業界では、ドライバー不足が深刻化しており、この先の業界を支える担い手を確保するためには、「働き方改革」が切迫した問題となっています。人手不足が深刻化する背景には、第一に「長時間労働」が挙げられています。
そこで今回は、今後のトラック業界の課題となる残業依存の働き方改革に注目し、問題点や課題、解決策について紹介していきます。


残業依存の働き方改革

政府が進めている働き方改革の中で、もっとも明確な成果が得られたものが「残業時間の上限規制の設定」です。これは、労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の審査を経て、労働基準法の改正案を2017年秋の臨時国会に提出し、2019年度の施行を目指すとされています。

これまでも労働基準法には残業時間の上限規制が設けられていましたが、労働組合の合意さえ得られれば、残業を青空天井で増やすことができたのが実情です。このような抜け穴を防ぎ、罰則付きの法律によって残業時間の上限を守らせる改正案ができたことは画期的といえます。

さらに、これと一体的に、労働時間の長さではなく、成果に基づく専門職の働き方を定めた「高度プロフェッショナル制度」でも、一定の相互理解を得るという大きな成果がありました。これらは、いずれも残業手当に依存した旧来の働き方の抜本的な改革をもたらすための第一歩となります。

ただし、これらの働き方の規制改革は、企業の取り締まりの実行性なしには成功しません。このため、今後は労働基準監督署の機能強化により違反企業を確実に取り締まれる監視体制の強化が不可欠です。


トラック協会のアクションプラン

公益財団法人全日本トラック協会では、政府が2017年8月にトラック・バス・タクシーの働き方革命として取りまとめた「直ちに取り組む施策」を受けて、2018年3月30日に国土交通大臣に対し「トラック運送業界の働き方改革実現に向けたアクションプラン」を報告しています。

プランの内容は、トラックドライバーに関する長時間労働の問題点や労働条件の改善と処遇改善など、トラックドライバーの職業としての魅力向上のため、「平成36年度には時間外労働年960時間超のトラック運転者が発生する事業者の割合を0%」にすることを目標としています。

だし、この目標を達成するには、2019年4月に改正労働基準法が施行され、それから5年猶予の後の2024年4月から自動車の運転業務に罰則付きの時間外労働の上限規制が適用されることを前提としています。また、月60時間超の時間外労働に対する割増資金率引き上げを25%から50%に、中小企業への適用については2022年4月に施行されることを前提としています。
※参照元:全日本トラック協会ニュース


トラック業界の長時間労働の現状と問題点

日本の労働法では、企業ごとの具体的な資金や労働条件の決定は労使自治に委ねるというのが原則です。この例外とされているのが、最低資金の設定と労働時間の上限規制であり、これに違反した場合には罰則が課せられることになります。

慢性的な長時間労働は労働者の健康を損ね、最悪の場合には過労死に至ることもあります。また、労働者の蓄積は労働の質の低下を招き、競争力の低下を招くことになり、企業にとっては大きな損失となってしまいます。

トラック運送業界では、法定時間外労働が月60時間を超える事業所が中小企業で42.2%(最長の者)・13.4%(平均的な者)、大企業で40.6%(最長の者)・11.7%(平均的な者)、また、100時間超えは中小企業で9.8%(最長の者)・0.7%(平均的な者)、大企業で3.7%(最長の者)というデータが出ており、長時間労働をした者の割合は高い水準で推移しています。
※参照元:厚生労働省労働基準局


時間にとらわれない働き方へ

現行の残業労働に割増賃金を支払う制度は、労働者が1時間余分に働けば、それに見合った対価が生まれることを前提としています。一方で、本来、個人単位の働き方でその成果が問われる業務では、労働時間の長さよりも仕事のアウトトップの質がすべてです。

労働時間の長さに比例した残業手当を機械的に支給すれば、不公平なだけではなく、残業代稼ぎのモラルハザードを引き起こし易くしてしまいます。日本では、特定の専門職について実際に働いた時間の長さを考慮しない、みなし労働時間の「裁量労働制」が設けられています。

これには、資金が成果に基づき支払われ、働く時間を自由に選べる職種であっても、深夜・休日労働には割増残業代の支払い義務という規制が厳格に定められています。

少子化の進展で労働者が減少することは、労働者にとっての「売り手市場」を意味します。また、労働市場の流動化に対しては、「企業のクビ切りの自由化」という否定的なイメージが強いですが、それは労働者にとっても「労働条件の悪い企業からの脱出」を容易にすることでもあります。

長時間労働是正のためには、雇用保険のために生活を犠牲にするのではなく、「働き方の質の高い企業に移る」という労働者の選択肢を増やすことが基本となります。労働時間制度の改革は、労働市場の流動化を促す同一労働同一資金など、他の制度改革と一体的に行うことで、一層大きな相乗効果を得ることができるでしょう。