タクシードライバーは道に詳しくて当然というイメージがあるかもしれません。
まぁ確かに実際詳しい人が多いのは事実でしょう。
でも皆が最初から詳しかった訳ではありませんし私も土地勘ゼロ状態でスタートしました。
一応東京都に住んでいたにも関わらず道の知識としては殆どゼロからのスタートでした。
タクシー運転手は程度の差はあれど、例外なく全員がお客さんから教えてもらいながら、時にお叱りを受けながら少しずつ道を覚えていくのです。
あの道に詳しい運転手さんもそういう時代があった筈なのです。
<目次>
実はタクシードライバーは営業エリアに住んでいない事が多い
「地元の運転手さん?」
都心部で仕事をしているとお客さんからこんな事をよく言われます。
中には当然地元密着でやっている人もいるでしょうが、僕の場合は全く違いますし、知りうる限り多くの運転手さんは住んでいる場所とは違うところで営業をしています。
考えてみれば当たり前なんですが、東京都屈指の繁華街である六本木や新宿歌舞伎町あたりはタクシーのメッカとなっていますが、ここに住むって中々大変な事ですよ。
でもこういった繁華街で営業を行う運転手さんはめちゃめちゃ道に詳しいです。
車の移動に関しては住んでいる人よりも遥かに詳しい事なんかざらです。
これからも分かるように住んでいるかどうかなんか道路の詳しさに殆ど関係ないのです。
お叱りは受けるけども、最初はお客さんに教わりながら地図で復習して覚えていくのです。
それでも他府県から来たら流石にきついのでは?
確かに東京都内で仕事をしているタクシー運転手さんの殆どは都内、もしくは隣の埼玉か千葉か神奈川に住んでいる事が多いでしょう。
しかし東京都内一つとっても広いんです。
私自身も一応東京都出身とは言え場所が中心部からかなり西にずれた多摩市であった為、23区武三エリアタクシーの主な営業地である中心部(目黒区、中野区、新宿区、渋谷区、台東区、豊島区、港区、中央区、千代田区、文京区、江東区等々)に関しては全然分かりませんでした。
そんな事言っても東京出身者なんだから地名が少しは頭にインプットされていたんでしょ?って思われるかもしれない。
恥ずかしながら地元からあまり出なかった為に本当に土地勘がありませんでした。
仮に向かうにしても電車移動だったので、道路の名前も交差点の名前も何も知らない。
これらは全てタクシーを始めてから覚えました。
仮に土地勘があってもお客さんに聞かないと無理
タクシードライバーになるにあたって、中途半端に土地勘があるくらいなら真っ新な状態で始めた方が良いと考えるのが僕の持論です。
その理由は、今までの道に詳しいレベルではお話にならないからです。
タクシー運転手に求められる道路の詳しさは、何も最短ルートだけではありません。
最短ではないけど空いている為に一番早く着けるルート、有料道路を通るけど最も早く到着するルート、時間はかかるけど最短ルート、最も安価で到着するルート、等々。
これらが朝夕のラッシュ時や時間による交通規制、事故や工事、時間によって複雑に変化していきます。
おまけに目的地の建物のどの面に車を着けるかによってもルートが変わってきますし、道を挟んで反対側で降ろしても良いのか、建物に接した場所で降ろさなければならないのかだけでも大きく変わります。
同じ目的地でも乗車位置によって全く別のルートになりますしね。
これらをお客さんから細かく聞き、瞬時にルートを絞り込んでいく作業が求められるのです。
これ、地元に住んでいるってだけで簡単に出来ます?
絶対に無理ですよ。
タクシーをやれば分かるのですが、知っていたはずの場所でも実戦では全く通用しません。
土地勘が無い方がトラブルが少ない理由
始めて半年くらいだとある程度道も覚えてきて、お客さんから言われた場所に行ったことがあるケースも増えてくる事でしょう。
しかしここに落とし穴が待ってます。
上でも少し触れましたが、同じ施設でも着ける場所が全く違う事なんかざらにあります。
羽田空港一つとっても、第一ターミナルなのか第二ターミナルなのか、出発ロビーなのか到着ロビーなのか、国際線ターミナルなのか、整備場の方なのか。
高層ビルには複数の車寄せがあるなんてざらです。
六本木ヒルズとその周辺に至ってはテレ朝、A,B,C,ハイアットホテルの中と外、一体何個車寄せがあるんだよって思うくらいですよ。
中途半端に土地勘がある状態だと、知っているつもりで向かって、結局お客さんに怒られる事になったりするんです。
「あー1回行ってるからわかるぞー」なんつってピンポイントで特定しなかったりすると、着け場所が違ったり、工事でルートが変わったせいで道路挟んで反対側に来てしまい、Uターンも出来ずそこから建物側に移動する道を知らないなんて事にも。
知っていると言って勝手に進んで後で知らない事がばれる、これが一番お客さんから嫌がられ怒られるパターンです。
最初から開き直って怒られることも確かにあるんですが、それでも数回行ったことがある程度の場所ならば、謙虚に道をお聞きするのが一番間違いがないです。
殆どのお客さんはタクシーの事を理解してくれていて、道を知らない事に怒ったりしません。
それよりも知っていると言い張るくせにあまり詳しくないという方がよっぽどトラブルになります。
いずれにせよ謙虚さが無いとトラブルになるのは当たり前ですけどね。
大半はカーナビでどうにかなる
今や都心部のタクシー会社ではほぼ100パーセントの普及率のカーナビ。
ごく一部にカーナビを使う事で嫌な顔をするお客さんもいますが、殆どの場合はやむ負えない場合は快く了承して頂けます。
10年以上続けている私は今でこそ1日に全く使わない日もありますが、新人の頃は毎回カーナビに目的地を入れさせて貰っていました。
道を覚えるうえでカーナビは宜しくないという論調が目立ちますが、私の場合はむしろカーナビによって道を覚えました。
紙の地図は良くて液晶ディスプレイの地図は駄目だなんてナンセンスも良いとこ。
結局は道を覚える意識が高いか否かの差で、私はこの道の先はどうなっているんだろうとナビをスクロールさせていって覚えました。
道を知らないという理由でタクシードライバーデビューを躊躇する必要は全くない
道は嫌でも覚えます。
もちろん通った道をもう一度確認しておいたり、抜け道を先輩に聞いたり調べたりする事は大切ですが、営業するエリアを無闇に広げなければ、大体1年もすればお客さんから道を聞く事は殆ど無くなると言っていいでしょう。
ここまで来ると脳内で面白いように道が繋がってアハ体験の連続です。
それよりも道を知らないからお客さんに迷惑をかけちゃうかもなーと不安になるような方こそ、接客業に向いていますし業界からも会社からもお客さんからも求められている人材なのは断言できます。
出典:たくのり