- この記事の要約
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「ドライバーが健康診断の再検査や精密検査の指示を無視するとどうなるのか?」
毎年受ける健康診断は、会社と従業員の両方に義務があります。しかし、健康診断で再検査や精密検査が必要とされても、それに応じない人もいます。運送業界では、再検査を受けないことは大きな問題です。
2021年の法律改正で、健康診断や再検査を受けない運転手が事故を起こすと、会社のトラックが停止される可能性があります。
再検査を受けずに仕事を続けると、重大な事故を引き起こすリスクがあります。多くの会社は、再検査を受けない運転手に対して懲戒処分を行います。例えば、再検査を受けない間は運転を禁止する規則があります。
一部の会社は、再検査の費用を負担することもありますが、必ずしも義務ではありません。しかし、自分の健康を守るためには、費用がかかっても再検査を受けるべきです。
運転手は、自分の健康と安全のために、健康診断の結果を無視せず、適切な対応をすることが重要です。
通常、年に一回受診する法定の健康診断については、労働安全衛生法上、会社に実施義務がある一方、従業員にも法律上の受診義務があり、また法定健康診断は会社の費用で行うものであるため、これを無視して受診しない人はほとんどいないと思います。
これに対して健康診断の結果、再検査や精密検査の所見が出た場合については、法的に再検査等を受診する義務は無く、また受診費用が本人負担になることが多い為、再検査や精密検査の指示を無視して放置している人も時々散見されます。
一方、企業側としても、健康診断の結果、再検査等の所見が出た社員に対し、再検査の受診を勧めることや、その結果を記録に残すことが労働安全衛生法上の努力義務として推奨されているにすぎず、形式的に再検査の受診勧奨を本人に通知するだけで事後の結果確認を怠っている会社もしばしば見られます。
しかしながら、トラック運送業の場合は他業種とは異なり、健康診断とともに再検査の受診が大変厳しく求められています。
2021年の貨物自動車運送事業法改正により、法定の健康診断が未受診の場合および健康診断の再検査を受診させずに乗務させていた社員が健康起因事故を発生させた場合には、40日車の車両停止(再違反は80日車)とする行政処分の厳格化が行われました。
行政処分厳格化の背景には、運送業における健康起因事故の増加があり、トラックが引き起こす事故は死傷者を生ずる重大事故につながりやすいことから、健康管理の厳格化が要請されたものです。
これにより、運送業で勤務するドライバーが健康診断の再検査や精密検査の指示を無視することは許されず、必ず指示に従い再検査を受診することが求められています。
そのため、運送業の就業規則には、通常の健康診断受診義務に加えて、再検査等の受診義務も並列で規定するケースが多く見られます。
再検査を受診させずにトラックに乗務させると、重大事故の発生リスクに加えて、行政処分のリスクも生じることから、受診義務に従わない社員に対し、乗務停止や出勤停止等の懲戒処分の対象にするケースも珍しくありません。
例えば、就業規則に「健康診断で再検査や精密検査の所見が出て、会社が受診を指示した場合は、必ず受診してその結果を会社に報告しなければならない。受診指示に従わない場合は、その間の乗務を禁止する。」などと定めてあるケースです。
なお、会社によっては、再検査の受診費用を会社負担として補助するケースも見られますが、法定健康診断とは異なり、再検査等の受診費用を会社負担にする法的な義務はありませんので、会社負担にするか自己負担にするかは会社により様々です。
そもそも再検査や精密検査の所見が出ている以上、自分の身体に何らかの異常が生じている可能性が有りますから、自分の健康維持のために、費用負担に関わらず受診したほうが良いでしょう。
また、会社によっては睡眠時無呼吸症候群の検査を会社負担で実施しているケースがありますが、この場合も検査で異常が発見され、治療対象になった場合は、放置せず専門医を受診して治療を開始する必要があります。
トラックドライバーは自らの健康と安全を守るため、健康診断等の結果を放置せず、その都度適切な対処を行うことが極めて重要であると言えるでしょう。