トラックドライバー不足の原因と、解消のために運送会社が対策すべきこと

物流・運送業界における
ドライバー不足の現状

物流・運送業界におけるドライバー不足は、年々深刻化しており、現在のドライバーの人数は約84万人とされていますが、この数は減少傾向にあります。ネット通販の需要が高まる中で、配送量の増加に対してそれを運ぶドライバーの人数が不足しているのが現状です。
そして、この問題は今後さらに深刻化すると予測されており、特に2024年には新たな法律が施行されることで、物流業界は大きな影響を受けることとなります。
また、ドライバーの高齢化もこの問題を悪化させており、国土交通省の調査によると全産業平均よりも若年層の割合が6.5％程度低く、中年層以上の割合が高い状態となっています。

ドライバー職の有効求人倍率は2022年8月時点で2.08倍となっており、これは全職業の平均よりも2倍近く高い水準です。求人の募集は増加しているものの、求職者が少なく人が集まらないのが現状です。
このような背景から、公益社団法人鉄道貨物協会は、2028年度にはドライバー不足が27.8万人に達すると予測しており、今後さらにドライバー不足が進む見込みです。

他にも、ネット通販の需要増が、物流業界におけるドライバー不足の主な原因の一つとされています。近年では、消費者のオンラインショッピングの利用が増加しており、それに伴い物流の需要も高まっています。
しかし、ドライバーの人数はそれに追いつくほど増加しておらず、その結果としてドライバー不足が生じています。そして、この問題は物流業界だけでなく、消費者にとっても配送の遅延などの問題を引き起こしています。

さらに、ドライバーの高齢化も重要な原因となっています。運転の仕事は体力を必要とするため、高齢者にとっては負担が大きいものとなります。そして、若者の間でもドライバーという職種はあまり人気がなく、新たなドライバーの確保が困難となっています。
また、ドライバーの労働条件も改善が求められており、他の業種に比べて年収が低い、労働時間が長いといった問題が指摘されています。

法律の変更もドライバー不足に影響を与える要因となっています。2024年には時間外労働の上限規制や改正改善基準告示が施行される予定であり、これによりドライバーの労働環境はさらに厳しくなる可能性があります。
そして、これらの法律の変更は、物流業界にとっては人手不足問題をさらに悪化させる要因となります。

物流業界におけるドライバー不足の問題は、今後も続くと予測されており、業界全体がこの問題の解決に向けて努力を続ける必要があります。そして、運送会社は労働環境の改善や労働条件の改善、そして新しいドライバーの確保など、多岐にわたる対策を検討し、実行する必要があります。

なぜドライバーが不足している？
主な原因は？

ドライバー不足の主な原因は多岐にわたります。
EC市場の急成長により物流需要が増加している一方で、ドライバーの高齢化、労働条件の厳しさ、長時間労働、および免許制度の変更などがドライバー不足を招いています。また近年では新型コロナウィルスの流行に起因する配送量の増加もあります。
これらの要因が相互に関連した結果、ドライバー不足問題をさらに複雑にしているのです。
労働条件に関しては、他の業種に比べてドライバーの年収が約5％～10％低く、労働時間が約2割長いため、運送業界への就職志向が低くなっています。さらに、労働環境も改善が求められており、特に長距離ドライバーの場合、休憩時間の確保や労働時間の適正化が課題となっています。

一方で、運転免許制度の変更もドライバー不足に影響を与えています。例えば、新規ドライバーの免許取得が難しくなったり、既存のドライバーが新たな要件を満たすために追加のトレーニングを受けなければならなくなったりしています。
これにより、ドライバーの新規参入が難しくなり、既存のドライバーも業界から離れる可能性があります。また、免許の更新に伴うコスト増もドライバーおよび運送会社にとって負担となっています。

さらに、コロナ禍による影響も無視できません。感染症の拡大により、ドライバーの健康と安全が懸念され、一部のドライバーは仕事を辞めざるを得なくなりました。 また、コロナ禍の影響で物流需要が急増し、ドライバーの労働負荷が増加しています。
この様に様々な要因が互いに作用することで、昨今のドライバー不足問題へと発展しているのです。

これらの原因を総合的に考慮することで、運送業界はドライバー不足問題に対処するための具体的な対策を講じなければなりません。労働条件の改善、労働環境の改善、新しいドライバーの確保、および業務の効率化など、多岐にわたる対策が求められています。
しかし、これらの対策を実行するには、業界全体の協力と政府の支援が不可欠であり、運送業界が直面する困難を解決するためには、さまざまなステークホルダーが連携し、積極的な取り組みを進めることが求められています。

今後さらに懸念される
2024年問題

2024年には、運送業界における労働法改正が予定されており、これによりドライバーの労働時間が厳格に規制されることとなります。具体的には、時間外労働の上限規制や改正改善基準告示が施行され、運送業界における労働環境はさらに厳しさを増す可能性があります。
この法律改正により、運送業界は人手不足問題をさらに深刻に感じることとなり、特にドライバー不足は今後も続く大きな課題となります。
また、この法律改正は運送業界における労働条件の改善を促進する一方で、運送会社にとってはコスト増や労働力の確保が更に困難になるという側面も持っています。

この法律改正は、運送業界における労働時間の短縮や休憩時間の確保など、ドライバーの労働環境改善を目的としています。
しかし、これに伴い運送会社は労働力を確保することが難しくなり、また運送コストも増加する可能性があります。
このような変化は、運送会社だけでなく、物流業界全体にとっても大きな影響をもたらし、結果として消費者にも影響を与える可能性があります。具体的には、配送遅延や送料の増加など、消費者にとってもマイナスの影響が出る可能性があります。

この法律改正に対応するため、運送業界はさまざまな対策を検討し始めています。例えば、労働力の確保や労働時間の適切な管理、効率的な運送ルートの設計や運送業務のデジタル化など、効率を上げコストを削減するための対策が求められています。
また、運送業界は政府や関連機関と連携し、法律改正に対する対応策を共同で検討し、実行することが求められています。さらに、運送業界は新しい技術の導入や運送システムの最適化など、今後の成長と持続可能な運営を目指して革新的な取り組みを進める必要があります。

2024年問題は、運送業界における人手不足問題をさらに深刻化させる可能性がありますが、同時に運送業界の労働環境改善や効率化、技術革新の機会をもたらすものとなります。運送業界はこの法律改正を契機に、労働条件や労働環境の改善を図りながら、効率的で持続可能な運営モデルを構築することが重要となります。

ドライバー不足解消のために
運送会社が対策すべきこと

運送会社がドライバー不足解消のために検討すべき対策は、労働条件の改善、業務の効率化、個人事業主のドライバーの活用、そして女性が働きやすい労働環境の構築となります。これらの対策は、運送業界におけるドライバー不足問題の解消と、業界全体の持続可能な発展に貢献するものと期待されています。

労働条件の改善

労働条件の改善には、給与の見直しや福利厚生の充実が含まれます。
まず、給与水準の引き上げやボーナス制度の改善を検討し、ドライバーの収入を安定させることが必要です。また、長時間労働や過度の労働負荷を軽減するために、労働時間の適正化や休暇制度の充実も検討すべきです。
さらに、労働環境の改善や安全対策の強化もドライバーのモチベーション向上に寄与します。最も重要なのは、ドライバーの声を聞き入れ、彼らのニーズや要望に応える協力的な対応をすることです。これらの労働条件の改善措置は、ドライバーの定着率を向上させ、長期的な解決策となります。

業務の効率化

また、業務の効率化も重要です。
まず、ルート計画の最適化や配送スケジュールの最適化を導入し、無駄な時間や距離を削減します。テクノロジーを活用して、リアルタイムの交通情報や天候情報をモニタリングし、配送の遅延を最小限に抑えます。また、デジタル化により、紙の手続きを減らし、作業の効率を向上させます。トラッキングシステムやIoTデバイスを導入し、貨物の安全性を高め、盗難や損害のリスクを低減します。
さらに、ドライバーにトレーニングやスキル向上の機会を提供し、効率的な運転や積載方法を向上させることも重要です。これらの効率化策は、運送業務の生産性を高め、ドライバー不足の緩和に寄与します。

個人事業主ドライバーの活用

個人事業主ドライバーの積極的な活用は、ドライバー不足を補う一方で、新しいビジネスモデルを提供し、運送業界の拡大に寄与します。
個人事業主ドライバーは自身の車両と独立性を持ち、柔軟なスケジュールで配送を行えるため、以下のような利点があります。

• ドライバー供給の拡大：個人事業主の参加により、運送会社は急な需要増加に対応でき、ドライバー不足を解消できます。
• 経済的効率性：個人事業主は自身の車両と燃料を提供するため、運送会社は固定コストを抑え、コスト効率が向上します。
• 柔軟性：個人事業主は自分のスケジュールに合わせて働けるため、急なスケジュール変更や特別な配送ニーズに迅速に対応できます。
• 地域カバレッジ：地域に密着した個人事業主は、ローカルな需要に対応でき、広範な地域へのサービス提供が可能です。
• 顧客満足度向上：迅速で柔軟な配送が可能となり、顧客満足度の向上が期待されます。

女性が働きやすい労働環境の構築

女性が働きやすい労働環境の構築もすべきです。まず、女性ドライバーのための安全対策を強化し、夜間勤務時の安心感を提供します。適切なトイレや休憩施設の整備も大切です。
柔軟な勤務時間やパートタイムの選択肢を提供し、家庭との両立をサポートします。性別に関わらず平等な給与とキャリアチャンスを提供し、差別やハラスメントを排除します。
さらに、女性ドライバーのニーズをリスニングし、フィードバックを受け入れる文化を醸成します。女性ドライバーの採用を積極的に推進し、多様性を尊重する姿勢を示すことが、ドライバー不足の解消と業績向上に貢献します。

まとめ

今回の記事を通じて、ドライバー不足問題の深刻さと、それに対する運送会社の対策について考察しました。ドライバー不足は運送業界全体の課題であり、これを解消することで、業界はより持続可能で効率的な未来へと進んでいくことができます。
そして、運送会社はドライバー不足解消のための具体的な対策を速やかに実施し、業界全体の発展を支え、社会全体の物流を支える重要な役割を果たし続けることが期待されています。