タクシー乗り場と手前にいるお客さんはどちらが優先なの?徹底解説します


東京23区と武蔵野市三鷹市が営業エリアの特別区・武三交通圏は、運賃改定により初乗り運賃が730円から410円に変わりました。
加えて昨今のタクシードライバー不足により、タクシー乗り場でお客さんが列を作って待つ光景をよく見るようになりました。

そうなると現れるのがタクシー待ちの列に並ばずに、タクシーの進入路の先で入ってくるタクシーを先に捕まえて乗ろうとするお客さん。
普通に考えてこんなマナー違反が許される訳がないと思いますが、実はタクシードライバーは運送の申し込みを断ると乗車拒否となり、重い処分が科されます。
果たしてこの場合、タクシードライバーはどちらのお客さんをお乗せすればいいのか、お客さんは列に並ばないモラルの無い人に何も言えないのか。
タクシーセンターに問い合わせた結果や、道路運送法の条文から明確な答えが出ますので解説いたします。


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運送の申し込みを受けた順序により旅客を運送をしなければならない

道路運送法の14条にこんな条文があります。

第14条 一般旅客自動車運送事業者は、運送の申し込みを受けた順序により、旅客の運送をしなければならない。ただし、急病人を運送する場合その他正当な事由がある場合は、この限りでない。


これを分かりやすく言うと、急病人や正当な事由が無い限り、先に乗る意思を見せたお客さんを乗車させないといけませんという事。
あれ?でもこれでは列を抜けて先に手を挙げたお客さんに優先権がありそうですね。

これが事実ならタクシー乗り場なんて成り立ちません。
馬鹿正直に並ぶだけ損ですよね?
タクシー乗り場って並び損なのでしょうか?
いいえそんな事はありません。

タクシー乗り場は並んでいる時点で申し込み

タクシー乗り場の列を抜けてその先で空車のタクシーを捕まえようと手を挙げても、その手よりもタクシー乗り場に並んでいるお客さんの方が先に申し込みをしているとみなされます。
これは常識的に考えてもそうですし、改めて東京タクシーセンターに問い合わせた所その理解で問題無しとの事。
つまり、乗り場手前のお客さんは申し込み順序の法令上の優先順位は、タクシー乗り場の一番後ろに相当するという訳。
もちろんタクシー乗り場に誰もいなければそのお客さんをお乗せしないと乗車拒否となりますが、タクシー乗り場に一人でも待機していたらタクシー乗り場のお客さんが先に申し込んでいる事になります。

タクシー会社では手前のお客さんを乗せろと教える?

この問題を複雑化させている要因の一つに、タクシー事業者があろう事か手前のお客さんを乗せないと乗車拒否となると乗務員に教えているという事実。
これはタクシー会社の教育の不備であり無知の表れでもあるのですが、この間違った解釈を教え込む会社が意外と少なくないのです。
これは売り上げアップの為とか悪気があるわけでは無く、事業者は皆東京タクシーセンターを恐れているからです。

タクセンの取り締まりは会社全体の減点となり、事業者の評価や車両の停止処分等に繋がる為、逆らわないように常にビクビクしています。
業界には過去にこのパターンで手前のお客さんをお乗せしなかった事で通報が行き、乗車拒否として処分されたという噂が根強く残っています。
(真意は定かではありませんが、どうやら弁明が下手で本当に処分されてしまったらしいです…)

乗車拒否アレルギーから間違った噂が根強く残り、未だに逆の事を教えている事業者があるのも事実です。

でも手前のお客さんは本当に無視しちゃっていいの?

今の時代悪意を持って乗車拒否を行う運転手さんはまずいません。
どこでもお客さんがいた時代とは違い、今は拒否すればするほど売り上げが下がってしまいますから。
でもたとえマナー違反で手前に立っているお客さんでも、完全に無視してタクシー乗り場のお客さんを乗せに行っても大丈夫なものなのでしょうか?
運転手さんは会社の運行管理者に口が酸っぱくなるほど乗車拒否をするなと言われているため、不安になってしまいますね。

旅客自動車運送事業運輸規則の第2条の2項にこんな条文があります。

旅客自動車運送事業運輸規則第2条2項 旅客自動車運送事業者は、旅客又は公衆に対して、公平かつ懇切な取り扱いをしなければならない。

旅客や公衆に対する懇切(こんせつ)な取り扱いとは、この場合、「あちらが優先ですのでタクシー乗り場からご乗車下さい」という一言を伝えてから去るのがベストという事になります。
中にはタクシー乗り場の存在を知らずに天然でタクシーを待っている可能性もある訳で、それを無視して走り去るとそれこそ乗車拒否として通報されかねません。
(弁明の余地は十分ありますが)

タクシー乗り場の申し込みってどこまでが範囲?

タクシー乗り場は並んでいる時点で申し込みを行っていると解釈出来るというのは前述の通りですが、とは言えその乗り場の効力はどこまであるのでしょうか?
タクシー乗り場からどれだけ離れれば流しタクシーを捕まえてよいのでしょうか?
これは駅ごとに事情も違う為、明確な線引きは不可能です。

ただ一つの目安として、タクシー乗り場の位置から見えない箇所であれば、当然タクシードライバーからも乗り場が見えない訳です。
そこでお客さんが手を挙げたら運転手さんはお乗せしないとまずいですよね。

例えば角を曲がったら乗り場が見える箇所の場合、手前のお客さんを乗せずに角を曲がって乗り場を見たらお客さんが一人も待機していないなんて事もあり得ます。
こうなると弁明の余地はありません。
やはりタクシー乗り場の位置から見えない場所であれば流しタクシーを捕まえても問題ないと考えるのが自然ですね。

但し、列を作るタクシー乗り場を尻目に角を曲がり流しタクシーを捕まえる行為はモラル的にはかなり微妙です。
大荷物だったり足が不自由で乗り場でタクシーを待つお客さんも多いので、正々堂々と並んで欲しいと、いちドライバーとして私は思います。

具合の悪い方は申し出て欲しいです

道路運送法の目的には公共の福祉を増進することが含まれています。
タクシーには公共交通としての責務があります。
例えば国土交通大臣の命令があれば、災害の救助や物資の運送を行わなければなりません。
事実、先の東日本大震災の時にはいくつかの事業者が被災地で臨時の旅客運送を行いました。

タクシー乗り場はもちろん並んだ順に申し込みがなされますが、その最中に具合が悪くなったり悪化したりする方もいる事でしょう。
中々勇気も出ないかも知れませんが、緊急事態の場合は遠慮なく申し出てほしいです。
上の道路運送法14条にある通り、急病人は運送順序が変わっても問題は無いとされています。
酷い状態ならばもちろん救急車ですが、目眩や胸の痛み等の場合で家に帰れば沈静化する見込みのある場合でしたら、お声かけ頂ければ運転手として他の旅客に説明して優先的にお乗せする準備があります。
運転手さん側は最低限これを説明できるくらいは運送の順序を理解していたいですね。

出典:たくのり

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